メールの「"隠れ"上から目線」でしくじらないコツ 知らずにしている「~してあげる」態度に要注意

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

いわば、仲間とともに空に浮かんだ月を見上げながら話すような構図。これをぼくは「共望型コミュニケーション」と呼んでいます。

(『伝え方──伝えたいことを、伝えてはいけない。』より)

たとえば、経営者である相手にアートを学ぶことをすすめる、としましょう。先ほどの3つの型にのっとれば、それぞれ次のような表現になるでしょうか。

〈上意下達型〉「経営者ならアートを学びなさい」
〈下意上達型〉「経営者ならアートを学ばれてはいかがでしょう」
〈対等型〉「経営者ならアートを学んだほうがいい」

ただ、先ほどもお話ししたように、このうちのひとつを選ぶと、ほかの高さの相手には受け入れにくいものになってしまいます。だから、伝える相手が不特定多数のときは、話題自体を高い位置に置くようにする。

いまの例でいえば、こういう投げかけをします。

〈共望型〉「経営者にはいま、アートの感覚が必要だといわれています」

相手に向かって直接語りかけるのではなく、伝え手である自分と、受け手との間の高いところに話題を置いて、いっしょにそれを見上げているイメージ。

こうすれば、上位者に無礼と思われたり、下位者に卑屈と思われたり、対等な相手に妙な違和感をもたられることもなく、話を受け入れてもらいやすくなります。

「対峙」するか「仲間」になるか

じつは、「高さ」を意識した、この「共望型コミュニケーション」には、さまざまな立場の人たちに伝えやすいというメリットのほかに、もうひとつ重要な役割があります。

話題を「いっしょに見上げている」という心理的な姿勢のおかげで、受け手から「(コミュニケーションのなかで)いっしょに考えていく」という姿勢を引き出しやすいのです。

伝え方——伝えたいことを、伝えてはいけない。
『伝え方——伝えたいことを、伝えてはいけない。』(クロスメディア・パブリッシング)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

先ほどの3つの型を意識すれば、たしかに上下関係によるトラブルは起こりにくくなります。とはいえ、「高さ」が適切だったとしても、とくになにかを提案したり、教えたりする場合には、直接ぶつけるような投げかけになるだけに、ともすると押しつけがましさを受け手に感じさせてしまうことがあります。

でも、「共望型コミュニケーション」をとれば、ともに同じ課題に向きあっているという意識になりやすい。結果、いわば同志の関係性をつくることもできます。

伝え手として、受け手と「対峙」するのか、「仲間」になるのか。

どうせなら後者でありたいわけですが、そういう関係性をつくる大切な手がかりのひとつが、コミュニケーションの「高さ」という目線にあるのです。

松永 光弘 編集家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まつなが みつひろ / Mitsuhiro Matsunaga

1971年、大阪生まれ。「編集を世の中に生かす」をテーマに、出版だけでなく、企業のブランディングや発信、サービス開発、教育事業、地域創生など、さまざまなシーンで「人、モノ、コトの編集」に取り組んでいる。20年あまりにわたって、コミュニケーションやクリエイティブに関する書籍を企画・編集。企業のアドバイザーもつとめており、顧問編集者の先駆的存在としても知られる。自著に『「アタマのやわらかさ」の原理。クリエイティブな人たちは実は編集している』(インプレス刊)、編著に『ささるアイディア。なぜ彼らは「新しい答え」を思いつけるのか』(誠文堂新光社刊)がある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事