『南総里見八犬伝』は、こんな書き出しから始まる。
安房を治めた里見家は、徳と義理をもって民衆を率い、すぐれた戦略によって強敵を倒しました。里見家は、上総・下総を、十代末まで伝え、そして八州を治めることになり、百将の頂点に立ちました。
この時代、里見家には――優れた臣下が八人いました。
それぞれ犬の字が姓についておりました。彼らは、「八犬士」と呼ばれたのです。
江戸時代に綴られた『南総里見八犬伝』であるが、実は舞台は、室町時代後期の千葉(安房国)。足利家が京都で将軍をしていたころの時代だ。この書き出しからわかるとおり、『南総里見八犬伝』は、里見義実を助ける八人の臣下の活躍を描いた物語となっている。
八犬士が出てくるまでがかなり長い
……が、何が難点って、この話、八犬士が出てくるまでがかなり長いのだ。というのも、八犬士がいかにして生まれたか、からしっかり描いている。
ちなみに「犬士」がなぜ生まれたか、もかなり強烈な物語で、里見家の生き残りである姫が霊犬と契り、妊娠して産んだのが八犬士なのだった。……どういう話なんだよ!? と現代の価値観からしたら驚くべき物語のはじまりではあるのだが、この八犬士が生まれた際に飛び散った八つの玉が物語を貫く重要要素となるのだから、馬琴先生の発想力は侮れない。
ちなみにこの霊犬・八房は、八つの牡丹の花の斑をもつ犬でありながら、「里見家に怨みを抱く美女の怨霊が取り憑いた犬」だったのだ。もはや現代人にとってはもう何が何やらわからなくなってくる世界観であるかもしれない。
いちおう八房の意図としては、里見家に怨みをもった美女が、「畜生道に落とす」という手段で里見家を貶めようとして、伏姫に取り入った……という説明がなされている。
物語序盤で里見家は一度滅亡してしまうのだが、八犬士の活躍によって、里見家の復活を遂げる、という物語が『南総里見八犬伝』全体のストーリーとなっている。が、このように里見家に関する物語が案外長く続く。しかも主人公が八人もいる。そりゃ『南総里見八犬伝』、大長編にもなるよなあ、と読んでいると思うばかりだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら