朝ドラ「らんまん」視聴率がじわじわ高まる"なぜ" 嫌われそうな設定でも好かれるキャラの絶妙さ

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らんまん
視聴者から人気を博している万太郎(神木隆之介)&竹雄(志尊淳)のコンビ(写真:『らんまん』公式サイトより)

“朝ドラ”こと連続テレビ小説『らんまん』(NHK、脚本・長田育恵)の評判がすこぶるいい。これぞ朝ドラ、あるいは、大河ドラマの風格すらあるという評価まで出るほどだ。2023年4月からはじまり、5月に入ると世帯視聴率も上がってきた。

どこが高く評価されているのか、見る人の心を打つドラマが生まれた理由は何か、『みんなの朝ドラ』『ネットと朝ドラ』と朝ドラに関する著書を2冊上梓している筆者が考えてみた。

苦労が報われる“世紀の瞬間”を見たい

『らんまん』の、なによりもまず評価したい点は、ストーリーがしっかりしていることである。主人公は、日本の植物学の父とも言われる牧野富太郎をモデルにした槙野万太郎(神木隆之介)。

高知に生まれ育った万太郎は植物研究に夢中になり、研究をさらに深めるために上京し東京大学に出入りするようになる。小学校中退ながら、優れた植物研究や英語、絵画の能力で、日本の植物研究の道を切り拓いていく。

朝ドラで受ける要素の1つは、主人公が実在する偉人であることだ。その点を万太郎はクリアしている。なぜ実在する偉人の物語が好まれるかといえば、あらかじめ、主人公が成功する未来を知ったうえで安心して見ることができるから。

実業家として成功する、ウイスキーを開発する、インスタントラーメンを開発する、ヒット曲を作曲するなど、主人公がこれまで経験したあらゆる苦労が報われるという“世紀の瞬間”を見たい人は多いものなのである。

万太郎の場合、成功者、偉人とはいえ植物研究は地味ではないか? という心配もなんのその、モデル・牧野富太郎の名言「雑草という草はない」は、昭和天皇の心をも動かしたというレジェンドがある。これは大きな援護射撃になる。

この名言は、すでにドラマに登場し、しかも、おりにつけ万太郎はこの精神を語る。ドラマにおける決めセリフのようでもあり、それもまた見ていて小気味いい。

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