朝ドラ「らんまん」視聴率がじわじわ高まる"なぜ" 嫌われそうな設定でも好かれるキャラの絶妙さ

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万太郎は綾や竹雄を救うけれど、決して彼らに対して絶対的に優位に立っていない。むしろ、万太郎は彼らに頭が上がらないのである。綾は姉として万太郎に毅然と接するし、竹雄が万太郎の浪費癖を「峰屋(実家)は若の財布じゃない」とたしなめるセリフはSNSで話題になった。

東京編に入ると、竹雄は“使用人”から“相棒”に昇格し、万太郎といいコンビになる。身分の違いなどなく、みんな平等で、それぞれの役割を自分なりに全うすることの大切さを物語っている。

万太郎が東京に上京すると、住居とする「クサ長屋」の人々も東大の落第生から彰義隊出身の者、落語家等々、個性的で、彼らのやりとりが楽しい。

さらに、「青長屋」こと東京大学・植物研究室の人々はもっと個性的。留学経験があり、やや西洋かぶれな田邊教授(要潤)、東大にプライドを持っていて、万太郎を「小学校中退」とバカにする徳永助教授(田中哲司)たちには華がある。万太郎と植物を通して“心の友”になった研究者、野田(田辺誠一)や、里中(いとうせいこう)も然り。

植物研究している人たちはみんな個性的でユニークである。さすが植物学を学ぶ人のドラマ。学ぶ人たちは全員魅力的になっているのだろう。徳永はいまのところ主人公に意地悪する悪役風味だが、それはそれで魅力的なのだ。

らんまん
東大助教授の徳永(田中哲司、一番左)たちとのやりとりも今後の見どころだ(写真:『らんまん』公式サイトより)

基本的に“悪い人”がいない

『らんまん』の良さは基本的に悪い人がいないことにもある。皆、悪そうに見えても悪くない。クサ長屋の倉木(大東駿介)は万太郎の大切な標本の入ったトランクを盗んだが、彼には彼のつらい思いがあってのこと。飲んだくれ、博打にうつつを抜かして働かないキャラにもかかわらず、悪い人には描かれない。

万太郎の幼少期、万太郎に意地悪した学友・佑一郎(中村蒼)もすぐに友情を育むようになり、万太郎の上京の手助けをするほどの関係性になっている。万太郎の祖母・タキ(松坂慶子)も旧時代の価値観を押しつける役割かと思いきや、彼女は彼女で女性蔑視に悩んできて、万太郎や綾に幸せになってほしい、ただそれだけを願っている人物なのだ。

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