朝ドラ「らんまん」視聴率がじわじわ高まる"なぜ" 嫌われそうな設定でも好かれるキャラの絶妙さ

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これまでの朝ドラでは、たいてい、主人公の道を阻む人物が登場してきた。働かない父、酒浸りの父、お金にルーズな兄、主人公をいびる姑やライバル……等々、それが今回いないのである。一瞬、嫌な人に見えても、それぞれの行動に理由があり、まさに「どの草花にも必ずそこで生きる理由がある。この世に咲く意味がある」なのである。

自由や革新を求めると、これまで大切にしてきた価値観、倫理や善意を否定してしまうことにもなり、それぞれの価値観を大切にするあまり、違う価値観を否定して傷つけあうこともある。

その問題を『らんまん』は、「どの草花にも必ずそこで生きる理由がある。この世に咲く意味がある」を前提に、誰もが自分のやりたいことをやるべきだけれど、他者のことも考えようとする物語になっている。殺伐としてない、広い視野を持った物語は、野に咲く花を見るような清々しさがある。

『らんまん』に込められた願い

『らんまん』は心が豊かになるドラマだ。これまで以上に、自分や他人を客観的に見る余裕をもったドラマが誕生したわけは、コロナ禍も少し収まって行動制限もなくなった今、この世の中の調和が戻ってきた証しではないか。あるいは、このような調和への願いがこもった物語なのではないか。

振り返れば、コロナ禍で制作された朝ドラは『エール』『おちょやん』『おかえりモネ』『カムカムエヴリバディ』『ちむどんどん』『舞いあがれ!』『らんまん』と7作にも及ぶのである。どの作品も不利な条件の中でよくやったと讃えたい。

さて、『らんまん』は、東京編で万太郎の妻となる寿恵子(浜辺美波)も本格的に登場し、彼女の母(牧瀬里穂)、叔母(宮澤エマ)のかしましい女性3人というキャラクターもおもしろいし、寿恵子が『南総里見八犬伝』に夢中になる読本オタクという属性があったことも物語を豊かなものにしている。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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