朝ドラ「らんまん」視聴率がじわじわ高まる"なぜ" 嫌われそうな設定でも好かれるキャラの絶妙さ

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キーワード「雑草という草はない」に基づいた「どの草花にも必ずそこで生きる理由がある。この世に咲く意味がある」という万太郎の信念は、人間に置き換えて考えることができる。

日本の植物を徹底的に調べ、記録するという偉業を行うことと同時に、万太郎は、出会う人、出会う人の個性に寄り添い、その人たちが、せちがらい世の中、尊厳を失いそうになっているところに「雑草という草はない」という精神を説き、救うのである。

ちょっとしたヒーローのようでもある主人公・万太郎を演じる俳優は神木隆之介。天才少年俳優として活躍してきて、5月19日で30歳。万太郎の無邪気な少年性から天才的知性、植物研究への強い信念などを見事に演じていて、テーマからブレずにしっかり立っているので、絶対的な安心感がある。

朝ドラは、時々、変わり種を作って、マンネリになることを防ごうとしているかのように思えるが、やっぱり、朝起きて最初に見るドラマは、尖っているより丸いほうがいい。当たり前の倫理観や道徳観念があってほしい。そういう意味では、万太郎は、ちょうどいい主人公なのである。

万太郎の底深い“魅力”

万太郎には正しいだけではなく、欠点もあるところが親しみやすい。

老舗の酒蔵の坊っちゃんとして生まれ、何不自由なく育ったため、時々身勝手なところもある。従来だと、恵まれた環境に育ち、お金に困らない人物は、ちょっと敬遠されがちなのだが、万太郎は嫌われないところで立ち止まる理性がある。また、幼少期、カラダが弱くて疎外感を味わったことから、弱さを知っている人物として描かれている。

経験が万太郎を、誰もが野に咲く花のように、名前と個性を持って、咲くべき場所で咲くのだという思いを抱くようにさせたのだ。

弱い自分を知っているからこそ、日陰に咲く花に気づくことができる。代表的な日陰の人物は、姉の綾(佐久間由衣)。まだ男女差別が激しい時代、どんなに酒づくりに興味があっても女性だから酒蔵にすら入れない疎外感を味わっている。

また、使用人の竹雄(志尊淳)は、身分制度があった時代、使用人として、命じられるままに万太郎に尽くしてきて、自分自身が何をしたいのかわからない。万太郎は、彼らに、生きる意味があることを気づかせる。それだけでも十分、良い話だが、『らんまん』にはさらにその先があるのだ。

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