と書いて、ここで終了しようと思っていたが、15日のECB理事会、16日の日銀、それぞれの金融政策決定会合を受けて、若干追加した。
ECBは前回に続いて0.25%の利上げを行い、今後も利上げを継続すると明言した。しかし、0.25利上げはすべての人が知っていたことで、かつ欧州のインフレの状況を見れば、まだ実質金利は大幅にマイナスなので、投資家たちは誰も文句を言わなかった。ユーロドル、ユーロ円ともにユーロ高となって上昇したが、混乱はどこにもなかった。
そして、16日の正午前、日銀は大方の予想どおり、まったく動かなかった。完全な無風である。1ミリメートルの政策変更もなかった。
15時半からの記者会見で、植田総裁が何らかの今後の正常化の動きを示唆、または含みを持たせると期待した向きも一部にあったようだ。だが、これも完全なゼロ回答。それどころか、就任前の国会での聴取からは大幅に後退、毎回しゃべるたびにハト派というか、自信のなさそうな話しっぷりになっている。
学者的な雰囲気はむしろさらに強まったかのようだ。少なくとも「闘う男植田」は消えた。
危機は深まっている
しかし、投資家もメディアも優しい。ほとんど植田批判は聞かれない。金融政策の中身については、黒田前総裁の路線を完全に踏襲している。黒田総裁は強気の会見だったからか、途中から総攻撃を受けたが、植田氏は金融政策崩壊の危機は刻々と近づいているのに、誰も攻撃しない。
なぜか。株価が上がっているからである。円安が再びジワジワと進んでいるだけで、ヘッジファンドの攻撃という、目に見える危機がないからである。むしろ、ヘッジファンドから攻撃の標的にされていないのに円安が進んでいるということは、対抗措置も効かないことを意味しており、危機は深まっているのにだ。
中央銀行がバカなのではない。投資家が愚かであり、メディアも、その日の危機をあおるニュース以外には関心がないという「平和ボケ」だ。
今さら私が吼(ほ)えていても仕方がない。ある意味、これが黒田日銀のいちばんの罪である。最も派手に金融政策を躍らせたため、人々の感覚が麻痺してしまい、静かな危機に不感症になってしまったからである。これこそ私が「(インフレを意図的に起こす)リフレはヤバい」と言ってきたように、リフレがもたらした最大の罪なのである。
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