なぜ危機にある日銀植田総裁にみんな優しいのか パウエルFRB議長は記者会見で吊るし上げ状態

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今後、危機がいよいよ崩壊となって実現したときのために、「正しい」金融政策を整理しておこう。これは私の意見ではなく、客観的な事実、誰も否定できない経済理論、市場の原理である。

「正しい」金融政策に向けた6つの指針

1:現在起きているインフレは、供給ショックがきっかけだった。それは収まったが、構造的な人手不足による賃金上昇圧力が顕在化し、中期的に継続する。
2:それに対しては、金融政策は直接的な効果がない。できることがあるとすれば、利上げしかない。金利上昇によって、不動産価格を下落させ、消費、投資需要を減少させ、主要因ではないものの要因の1つである需要の強さを減衰させるしかない。
3:インフレは継続すると定着してしまう。よって、短期的に大きなコストを支払っても、インフレの上昇継続を阻止する必要がある。結局、インフレは長期的な経済成長には大きなマイナスである。
4:「物価やGDPの名目的増加が重要だ」「経済指数は実質が中心だが、名目も現実世界では重要だ」という議論は、実質金利と名目金利にも当てはまる。それどころか、21世紀においては、名目金利は名目GDP増加率よりもはるかに重要だ。名目金利は明示的に銀行の融資姿勢、財務健全性に影響を与え、経済主体の投資行動に影響を直接的に与えるからだ。
したがって、高インフレ、高金利は経済成長にとって最悪のシナリオである。これは20世紀後半では誰もが知っていたことだ。だが、21世紀の最初の約20年間、流行を追う経済学者やエコノミストには忘れられていた。そして、彼らはようやくそれを思い出している。
5:「インフレ率は2%が理想だ」という理由はどこにもない。「ほかの国が2%だから、自分の国も2%にそろえたほうがよい」という理由は1つもない。それは各国それぞれの経済事情を反映して、むしろ、世界経済や各国経済の健全な成長のために、柔軟に調整されることが必要であり、インフレ率が各国で異なることこそ重要である。
変動為替レートの世界において為替を固定しようとするのが最も愚かであるのと同様に、各国の通貨、経済が相互依存の中で独立に動いている下で、インフレ率を各国でそろえようとするのは最も愚かしいことである。
6:YCCは、金融政策の歴史において例外中の例外の政策であり、緊急避難的に行われた歴史的事例が数例あるだけだ。しかも、それを長期に継続することはなく、実施した金融当局はいずれも、できる限り早くYCCから正常な金融政策に復帰することを目指していた。それでも、復帰のときには大きなダメージを金融市場に与え、当局が大きく反省したオーストラリアの事例(2021年11月にYCC目標撤廃)が教訓になる。

1~6以外にも、もっと言うべき重要なこともあるが、私の意見が含まれてしまう可能性があるため、今回はここまでにしておく。

繰り返すが、上記のことは私の意見ではなく、誰も否定できない客観的事実である。

(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が競馬論や週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)

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