そこでFEDはようやく利上げを開始した。しかし、大幅に金融引き締めが遅れたため、FEDもパニックになって、利上げ幅が0.25%から0.5%、0.75%と一気に拡大し、「4回連続で0.75%の利上げ」という27年ぶりの急激な引き締めを行った。
インフレを見誤り、これほどの規模では不必要だった利上げを、しかも21世紀としてはありえない急激なペースで行ったことが、激しく批判されている。
日銀の植田総裁への非難はゼロでいいのか
一方、ECB(欧州中央銀行)も、アメリカに負けず劣らずインフレが欧州でも進行したので、急激な利上げを行ってきた。ようやくインフレは減速してきたが、それでもインフレ率は非常に高く、それでいて景気も弱いままだ。
これは「意外と依然として景気が良く、その分インフレが収まらないアメリカ」とは大きく異なる。「景気も悪化しそう、インフレは止まらずアメリカよりもひどい。インフレが収まった先の成長力はもちろん、アメリカよりもはるかに弱い」というのが今の欧州経済だ。ということで、散々なありさまになっているのだが、ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁にはそれほど批判がない。
さらに日本に至っては、植田和男総裁は4月9日の就任後、事実上何の動きもないが、今のところ誰も非難しない。
日本経済は順調。インフレは少し高めだが、欧米よりは断然マシであり、景気自体も悪くない。これだけ問題が少ないにもかかわらず、黒田東彦前総裁が10年間にわたって行った、緊急避難的な危機対応の異次元緩和を維持し続けている。そして「副作用がもっと大きくなるまでは、現状の緩和を続ける」構えを見せている。要は、まったく動く気配がないといってもよい。
経済がこれだけ長期にわたって平時を取り戻したのであれば、普通の金融緩和は継続しても、緊急避難的なトリッキーな手法は即時撤廃すべきだ。
すなわち、ETF(上場投資信託)の購入やYCC(イールドカーブコントロール、長短金利操作)といった、世界の中央銀行の歴史において前代未聞、まさに古今東西類を見ない非常事態政策を継続していることを放置している。しかし、それでも「誰も不作為の罪」だと攻撃しない。
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