「かまいたち」で浮上、島根ローカル局の独自戦略 地域ビジネスに取り組む「さんいん中央テレビ」
小さな町に全国からファンが集まり、グッズもたくさん売れた。TVer→サブスク→グッズ→イベントというビジネスモデルがそこには見える。北海道テレビ発で全国人気になった『水曜どうでしょう』と構造が似ているが、当時は他のローカル局での番組販売が人気を広げた。『かまいたちの掟』も番組販売はやっているが、TVerが人気拡大のスピードを加速したのだ。ローカル番組が全国人気を獲得する新しいモデルができたと言えそうだ。
中国への越境ECにも取り組む
さんいん中央テレビは新規事業の分野でも斬新なことをやっている。ANAが出資する株式会社ACDに参画し、中国への越境ECに取り組んでいるのだ。
同局で報道部長を務めていた岡本敦氏は現在、ACDに執行役員として出向し毎日ライブ配信の現場にいる。
中国のSNS、WeChatに『青山246放送部』というチャンネルを作り、毎日4時間、日本のあちこちから配信しているのだ。ポイントは、中国人スタッフとともに配信を行い、彼らの意見を積極的に取り込むこと。岡本氏によると、「放送部」としたのも彼らの意見だった。
「中国には部活動がなく勉強ばっかりで『部活』に憧れがあるそうで、放送局より放送部のほうが日本っぽく感じるというので、『青山246放送部』にしました」(岡本氏)
ライバーと呼ばれる中国人の配信者が男性1名と女性2名いて、お客さんとコミュニケーションしながら配信する。スタッフも日本人4人、中国人7人で中国人のほうが多い。
いま5万人のファンがいて、自治体などから依頼があればそこから配信したり、もう1つ別に作った『日本好物推薦』というライブコマースのチャンネルに送り込んで相乗効果的に物販をするそうだ。
また、bilibiliというYouTubeのような動画共有サービス上に『漫応援』というチャンネルを持ち、そこではこれまでウルトラマンを演じた俳優たちの動画を置いている。1本あたり50万回程度再生され、登録者数は15万人を超えた。
『ウルトラマンオーブ』で悪役ジャグラスジャグラーを演じた青柳尊哉氏は特に人気で、個人チャンネルをACDが運営。島根の老舗酒造とコラボした日本酒も販売し大いに売れているという。青柳氏を動画サイトのイベント、ビリビリワールドに連れて行く特別イベントも準備中だ。
「このマーケットの先駆者としての“キー局”になれるような仕事をやりたいねと言っています。いつまでもローカルが下にいる構図ではいけない。川上に立って、仕掛けていかなければ」(岡本氏)
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