「かまいたち」で浮上、島根ローカル局の独自戦略 地域ビジネスに取り組む「さんいん中央テレビ」
「途中からこの人たちの言うことは一切聞かないと決めました。自分のやりたいようにやる。最終的に責任を取るのは私。だからもし何かあれば責任を取って辞めるだけです」(田部氏)。田部家を背負い、テレビ局を背負い、島根を背負っている。第25代田部長右衛門氏はそれらを背負うことから逃げない。最後に責任は取る。だから、やりたいようにやる。
社長になる前から新規事業に次々取り組んだ。
「今私がやってるさまざまな企画の中には赤字の事業もあります。それを、勝つまでやる。 勝つまでやれば負けない。全戦全勝の秘訣は、勝つまでやることです」(田部氏)
メディアではなく、地域創造カンパニー
そうは言っても、いま放送業界全体が悲鳴を上げている中で、今後どうするのか。その質問への回答にひっくり返った。
「うちは今、グループ全体で売り上げが200億ぐらいですから、実は放送外収入は、完璧なんです」
200億円? 一瞬何を言っているかわからなかった。県域ローカル局の売り上げはせいぜい50億円程度が普通だ。田部社長が言うには放送収入は35億円。それを大きく超える放送外収入があるということだ。
実際TSKグループのホームページにはソフトウェア販売やシステムインテグレーション、ビルメンテナンス、そして農業まで多種多様な企業が並んでいる。
「もはやメディア事業ではなく、地域創造カンパニーだと社員に言っています」という田部氏は、さらに教育事業にも広げていくビジョンを語る。
でもテレビ局はやめないとも田部氏はいう。
「地方はテレビの優位性がまだ残っていてあと20年はそれを保つと思います。その間に、地域ビジネスを確立しないと危ない」
地域創造のために、まだまだテレビ局には役割があるという考えだ。さらに、田部家には500年続いたたたら製鉄をやめざるをえなかった悔しさが受け継がれているようだ。だから、父が始めたテレビ局を自分の代で終わらせたくないのだと思う。
田部氏にインタビューしていると、戦国武将と話している錯覚を覚えた。つねに最前線で新しい戦い方を考えながら、民のためを思い領土を広げる。世の中を本当に変えるのは、こういう人物なのだろうと思った。テレビ業界だけでなく、行き詰まる日本のビジネス界のみなさんすべてに、彼の考え方を知ってもらいたいと思う。
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