「自分は客観的」自負する人に教えたい残念な真実 体感して理解!脳は現実を誤って解釈する

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私たちは脳を通じて世界を認識している。あなたが思う「真実」も、脳が見せた「幻想」なのかもしれない(写真:Graphs/PIXTA)
事実に見えたことが実際には思い込みだったにもかかわらず、間違った認識に基づいて大勢が行動する「集合的幻想」は、社会や組織、個人にいたるまで大きな弊害をもたらします。心理学者のトッド・ローズ氏が、今回は、脳の予測ミスが社会に与えている影響について解説します。
※本稿はローズ氏の著書『なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い込み」を打ち砕く技術』から一部抜粋・再構成したものです。

脳はコンピューターとは違う

脳は大量のエネルギーを消費する。例えば、毎秒11メガバイト相当の情報を目から取り込むことができるが、意識的に「見る」画像として「アップロード」できる情報は毎秒60バイトほどにとどまる。これは、パリの全住民の顔が目の前にあるのに、そのうち8人しか見えていないのと同じことだ。

時間と精神的エネルギーを節約するため、脳は2つのことをしている。

1つは、アップロードする情報の選別。「新しいものはある? 何か変わった? それは重要? 重要でないなら、もう知っていて理解もしている規範とパターンに頼って、エネルギーを節約しよう」と脳は考えている。

もう1つは、超高速の予測。事前の知識と経験をもとに、意識的思考が割り込む隙もなく、欠落した情報が補われる。そこにあるであろうものをすばやく推測することにより、脳は次の展開についてかなりいい勘をはたらかせている。

つまり、現実をありのままに処理するコンピューターとは違うのだ。すべてについて100パーセント正確であろうとしても、それは認知能力の盛大な浪費でしかない。ゆえに脳は重要でない詳細を省き、本当に必要なものに注力する。いま起きていることを理解し、変化を予測し、妥当な反応ができるようにするためだ。

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