吉野家、既存店好調の裏で露呈した「重い課題」 約8割が男性客と偏り、グループ客も少ない

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黒を基調とした外観の吉野家C&C店舗。内装もテーブル席などを増やして女性客やグループ客の取り込みを狙う(記者撮影)

老舗の牛丼チェーン「吉野家」は、ここにきて売り上げが安定した伸びを見せている。

運営会社の吉野家ホールディングス(HD)が6月6日に公表した、吉野家の5月の既存店売上高は前年同月比7.9%増と、高水準の数字をたたき出した。既存店売上高は2022年8月に0.6%減と前年割れとなったが、そこから9カ月連続で前年超え。2023年度に入ってからも3月7.4%増、4月7.6%増と、着実に伸びている。

2021年度にコロナの影響で苦戦した反動で、既存店売上高は2022年度に回復基調を辿った。その分、2023年度については前年超えのハードルが高くなっているが、勢いは落ちていない。

「牛丼並盛」は388円から408円に

好調の大きな要因は、2022年10月1日に行った値上げだ。「牛丼並盛」の価格を従来の388円(本体価格、以下同)から408円へと約5%値上げするなど、全商品平均で18.8円の値上げを実施した。この価格改定が奏功し、これまで客数に連動していた既存店売上高が、特にここ3カ月は客単価と連動して推移している。

既存店の快走につれて、業績も好調だ。吉野家HDが4月に発表した前2023年2月期の決算は、売上高1680億円(前期比9.4%増)、営業利益34.3億円(同45.2%増)と大幅増益で着地した。今2024年2月期も売上高1760億円(前期比4.7%増)、営業利益46億円(同33.9%増)と、増収増益を見込む。営業利益が40億円を超えるのは2018年2月期以来となる。

牛肉価格など食材費の高騰については、値上げですべてを吸収することはできないものの、牛丼食材の仕込み量を需要に合わせて細やかに調整するなど、仕入れ・工程管理の徹底によって利益の底上げを図る。

とはいえ、同社の社内に楽観の雰囲気はない。既存店売上高をつぶさに見ると、吉野家の「課題」が浮かび上がる。

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