外食チェーンの出店再加速を狂わす「2つの障壁」 深刻な「調達難」がコロナ回復シナリオの打撃に
「ちょっとサイズは合わないんだけど、今、これしかないから押さえといて」
今年の初夏、ある外食チェーンの幹部は現場にそう指示した。この幹部は、店舗で使用する冷蔵庫の調達に苦心したと打ち明ける。だが、無事に調達できたこのチェーンはまだ、恵まれているほうだろう。
コロナ禍で一時控えていた出店を再開させる動きが加速する外食業界。しかし今、大手を中心に出店計画に大幅な遅れが生じるケースが増えている。
例えば吉野家ホールディングスは今2023年2月期に、「吉野家」「はなまる」事業で47店出店する計画だ。しかし第1四半期(2022年3~5月期)の出店はわずか3店舗にとどまった。
「ある程度(価格が)高いのは目をつぶれるが、そもそもモノ(厨房機器)が調達できず、思うように出店できなかった」と担当者は語る。吉野家の店舗改装においても、通期計画の110店に対する進捗は8店舗。「今後アクセルを踏み、巻き返せる見込み」(同)とするが、現状は遅れている。
冷蔵庫などの厨房機器が足りない
コロナ以降、初めて3~5月期決算で国内事業の黒字化を果たしたサイゼリヤも同様だ。2022年は3~8月の半年間で11店増やす計画だった。しかし5月末時点の店舗数は、2月末と比べ4店減少している。
出店が遅れている主な原因について、サイゼリヤの潮田淳史経営企画部長は「冷蔵庫などの厨房機器が足りない」ことを挙げる。
飲食店向けに厨房機器の販売や改装サービスなどを行うテンポスホールディングスの担当者も、「ピーク時は発注から納品まで2カ月待ちはザラで、納品時期が未定ということも多かった」と明かす。
厨房機器がここまで不足した背景には、2021年来、供給網に混乱を来した数多くの理由がある。
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