外食チェーンの出店再加速を狂わす「2つの障壁」 深刻な「調達難」がコロナ回復シナリオの打撃に

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厨房機器不足や工事業者の取り合い、さらに工事費高騰といった三重苦の中、業界ではコストを抑えた出店や改装に舵を切る動きが出ている。

吉野家はこの数年、従来のカウンター中心のレイアウトではなく、カフェやファミレスを彷彿とさせる内装の「クッキング&コンフォート」店舗への改装に注力してきた。この店舗モデルでは、厨房機器も刷新するフルスペック仕様での改装が基本だった。

しかし2021年度には、投資を抑えた店舗改装モデルを開発。客席やレジ回りのみを改修し、厨房機器は従来のものを使い回して、投資負担を減らす。

子会社が「磯丸水産」を運営するクリエイト・レストランツ・ホールディングスも、2022年度から出店を本格的に再開させた。「箱(店舗面積)が大きいロードサイドは初期投資で億単位、ショッピングセンターへの入居も数千万かかる」(同社)ことから、居抜き店舗など、初期投資を抑えられるかたちでの出店に注力している。

居抜き店舗が人気を高める理由

飲食店などに物件を紹介しているCBREの奥村眞史氏は「居抜き店舗の引き合いは強まっている」と明かす。

物件を借りた後に一から開店準備を行うと、工事や設備納入のため、営業開始までに空白期間が生まれてしまう。その間も家賃は払い続けなければならないが、工事業者の逼迫や設備納品の遅れで、通常よりもその期間が延びている。それよりも必要な設備がそろい、大きな工事も不要な点が、居抜き物件が人気を高めている理由の1つだと奥村氏は分析する。

ただ、好条件の居抜き物件に入居できるとは限らない。「飲食店の生き残りが体力勝負となっている今、他店が抜けた穴を積極的に狙っている企業は多い」(大手外食チェーン)からだ。

ホシザキなど厨房機器メーカーの生産は正常化しつつあるとはいえ、「数カ月から半年で元通りになればいいほう」と見る関係者もいる。客数がコロナ前に完全に戻る例はまだ少ない一方、原材料価格や輸送費、人件費などが軒並み高騰し、値上げ後も十分に価格転嫁できていない企業も多い。

苦境を下支えした時短協力金も途絶えた。今後の出店が思うように進まないとなれば、外食企業のいばらの道はまだまだ続きそうだ。

冨永 望 東洋経済 記者

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とみなが のぞむ / Nozomu Tominaga

小売業界を担当。大学時代はゼミに入らず、地元密着型の居酒屋と食堂のアルバイトに精を出す。好きな物はパクチーと芋焼酎。

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