外食チェーンの出店再加速を狂わす「2つの障壁」 深刻な「調達難」がコロナ回復シナリオの打撃に

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半導体不足に伴いあらゆる家電や機械の納品遅延が叫ばれて久しいが、冷蔵庫なども例外ではない。そこに追い打ちをかけたのが、2021年にアメリカを襲った異常気象だ。冷蔵庫にも使われる断熱材を製造する大手現地メーカーが、寒波やハリケーンなど度重なる自然災害で被災した。

これを受けて、同社への依存度が高かった日本への断熱材の供給量が激減。頼みの綱だった中国の工場も、電力規制の影響などにより十分な代替先とはならなかった。そこに上海のロックダウンも重なり、断熱材や半導体以外の部品までもが枯渇するようになった。

業務用冷蔵庫や製氷機の国内最大手であるホシザキは、足りない部品を既存の取引先以外からも買い集め、生産停止を防いだ。同社の担当者は「(そうした部品は)価格が高いだけでなく、部品の型が不揃いなこともある。同等の性能を発揮できるか実験を繰り返し、納品までの時間を大幅に延ばしながらも、なんとか生産を継続した」と苦労を振り返る。

工事を請け負う職人も取り合いの状況

外食企業からの需要が一時的に増えたことも一因だ。テンポスによると「飲食店の商戦期である年末は、年間で最も買い替え需要が少ないにもかかわらず、2021年末は過去最高レベルの取引数だった」。

背景にあるのが、自治体からの時短営業要請に伴う協力金だ。時短要請により多くの飲食店は打撃を受けたが、協力金収入で潤った事業者もいる。テンポスの担当者は「節税のために買い替えを進めたケースもあるのではないか」と分析する。中小飲食店の買い替え需要が2021年末以降に急増し、さらなる需給の逼迫を招いた。

実は不足しているのは厨房機器だけではない。吉野家によると、「各社がコロナ禍で絞っていた投資を一斉に再開した結果、工事業者も取り合っている」状況だという。テンポスの担当者も「コロナで細っていたゼネコンなどの工事も再び増えており、そちらにも職人をとられている。工期が長い大手ゼネコンの工事は、個人事業主の職人や中小規模の工務店にとって、飲食店の改装より魅力的に映るのだろう」と語る。

建築資材の高騰もあり、工事費用はただでさえ高くつく状況にある。外食企業が職人たちを振り向かせるには、さらに上乗せした金額を積まなければならない。

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