吉野家、既存店好調の裏で露呈した「重い課題」 約8割が男性客と偏り、グループ客も少ない

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4月は客単価が前年同月比7.6%増だったのに対し、客数が0.1%減だった。5月も客単価8.5%増の一方で、客数0.5%減と横ばいだ。売り上げは回復しているものの、それに寄与しているのは客単価の上昇で、集客については苦戦しているのだ。

前述したように、吉野家は2022年10月1日に値上げを実施したため、このまま客数が伸びなければ、値上げ効果が一巡する今年10月以降については売上高の伸びが鈍化、あるいは下向く懸念がある。

男性客主体のビジネスモデルに限界

吉野家が集客改善への課題として意識するのは、客層の偏りだ。「このままの男性客主体のビジネスモデルでは、今後の成長に限界がある」と、吉野家HDの広報担当者は話す。

「『牛丼といえば男性の食べ物』とのイメージが強い」と、外食業界の関係者が異口同音に語るように、吉野家の客層は男性が中心だ。8割ほどを男性客が占めており、女性客が非常に少ない。5月中旬の平日の昼時に、ある都市部の店舗を訪れてみると、男性と見られる客が100%だった。

吉野家は、複数の人数で来店するグループ客の集客にも弱い。店舗の形態がカウンター席中心のため、グループ客はどうしても使いにくい側面がある。

今後の一段の成長のためには、女性客やグループ客の取り込みが欠かせない。その対策の1つが、店舗レイアウトの変更である。吉野家が2016年から展開し、足元でも拡張を急ぐのが「クッキング&コンフォート(C&C)」店舗だ。

C&C店舗はテーブル席を数多く配置し、ドリンクバーも装備する。ファミリーレストランのような雰囲気がある(写真提供:吉野家ホールディングス)

C&C店舗はテーブル席やソファー席を数多く設置した、ファミリーレストランのようなレイアウトとなっている。外観も従来のオレンジではなく、黒を基調としたデザインを採用している。ドリンクバーなど通常の吉野家店舗にはない商品も取りそろえる。

注文方法も従来の店舗と異なる。従来の店舗では、利用客が入店し席に着いてから店員に商品を注文する流れだった。C&C店舗では、利用客は入り口近くでまず会計を済ませる。商品の用意ができると手渡されたアラームが鳴り、利用客が自ら受け取り口に商品を取りに行く形式になっている。

C&C店舗では、テイクアウトの需要が拡大した。「C&C店舗は入り口近くで注文できることもあり、テイクアウトを利用しやすくなった。女性客がテイクアウトを利用するケースも増えている」(吉野家HD広報)という。

吉野家は目下、従来店舗からC&C店舗への転換を進めている。C&C店舗は2023年2月末時点で248店舗(前年同月比83店舗増)。今2023年度はさらに100店舗の改装と24店舗の新店出店により、C&C店舗を前年度末比で124店舗増加させる計画だ。2024年2月末時点では、全体の3割弱の店舗がC&C店舗となる計画だ。

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