なぜ近業が増えると、近視が進行しやすくなるのか。理解するには、近視のメカニズムを知る必要がある。
近視は眼球の前後の長さである「眼軸長(がんじくちょう)」が通常より長くなった状態だ。眼軸長が長いほど、近視が進行していることになる。
眼球はカメラのような構造になっていて、眼球の表面にある角膜から入った光は奥にある水晶体を通り、さらに眼底にある網膜でピントを合わせ、映像を認識する。眼軸長が長いと、網膜よりも手前で像が結ばれてしまい、遠くのものが見えにくくなる。
近業が近視を引き起こすメカニズムは、はっきりと解明されているわけではない。だが、有力な説が「調節ラグ」と呼ばれるものだという。大野医師が解説する。
有力な説「調節ラグ」とは?
「通常、近くのものを見るときには、水晶体は厚みを増して網膜にピントが合うように調節します。しかし、何らかの理由によって水晶体の調節力が機能しないとピントが網膜の後方にずれ、その状態が続くと網膜の中の細胞がそれに順応しようと働き、眼軸長が伸びると考えられています」
特に眼軸長が伸びやすいのが、身長が急速に伸びる小学校高学年から中学生にかけてで、この時期に近視の目になりやすい。
さらに、これまでは身長の伸びが止まれば眼軸長の伸びも止まり、近視の進行もストップすると考えられてきたが、近年はスマホなどの普及で、大人になっても近視が進行し続けることがわかってきた。だからこそ、成長期にいかに眼軸長の伸びを抑制するかが重要になる。
近視が増えている原因として、もう1つ指摘されているのが、屋外活動の低下だ。複合的な要因があると考えられているが、屋外の強い光を浴びない影響が大きいといわれている。
屋外は日陰でも1000ルクス(明るさの単位)あるが、屋内では窓際でも800ルクス程度。多くの照明を使用するテレビ局の撮影スタジオでも1000ルクスには届かないという。
「屋外の明るい場所にいると、網膜の中でドーパミンという神経伝達物質がつくられます。ドーパミンは、古くから近視を抑制する作用があるといわれているため、屋外活動によって近視が抑制されると考えられるのです」(大野医師)
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