【近視】国内で受けられる治療と期待の最新医療 専門家「大人になる前の治療が重要」の理由

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日本で受けられる近視治療と最新医療について解説します(写真:Fuchsia/PIXTA)
近視の増加が世界的な問題となっている。2016年にオーストラリアの研究グループが「2050年には世界の人口の半数にあたる約48億人が近視になる」との分析結果を公表し、WHO(世界保健機関)も近視を「公衆衛生上の危機」と警告。こうした背景から、近視の進行を抑制する治療について、世界中で研究が進められている。
近視は身長が伸びる時期に進行するため、この時期の対策や治療が重要となる。日本で受けられる治療について、日本近視学会理事長で東京医科歯科大学眼科学教室教授の大野京子医師に聞いた。

近視の進行を抑制する治療は、一般的に成長期の子どもが対象となる。近視は眼球の前後の長さ(眼軸長)が長くなり、ピントが合う位置がずれた状態だ。

「眼軸長は身長が伸びる時期に伸びやすく、近視が進行するので、この時期の治療が重要になります」と大野医師。最近はスマホの影響で近視が進むという考え方もあるので一概には言えないが、通常は身長の伸びが止まれば、眼軸長の伸びも止まり、近視の進行もストップする。

「大人になってからの治療は、手遅れなのです」と大野医師。

日本で受けられる治療3種

現在、世界的に普及していて、日本でも受けられる治療は、「低濃度アトロピン点眼」「オルソケラトロジー」「多焦点コンタクトレンズ」の3つ。

①低濃度アトロピン点眼

低濃度アトロピン点眼は1本(5ml、1カ月分)3000円前後で、1日1回就寝前に点眼するだけなので比較的負担が少なく、広く普及している。

古くからアトロピン点眼に近視を抑制する効果があることは知られていたが、まぶしく感じるなどの副作用も強いため、長期間使用するのは不可能だった。しかしシンガポールの研究で、濃度を薄めて副作用が出ないようにしても、ある程度の効果があることがわかり、一般的に使用されるようになった。

「低濃度アトロピン点眼が近視を抑制する効果は30%程度です。(後述する)オルソケラトロジーや多焦点コンタクトレンズに比べると、効果は劣るのが難点です。このため、オルソケラトロジー、もしくは多焦点コンタクトレンズと併用して、より効果を高めるという方も多くいらっしゃいます」(大野医師)

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