石破茂氏「専守防衛は軍事的には極めて困難」 党きっての防衛通が語る「あるべき安全保障」

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今後、日本の安全保障はどうあるべきか(撮影:尾形文繁)
中国の軍拡や北朝鮮のミサイル問題など、北東アジア、インド・太平洋地域の軍事バランスが崩れつつある今、安全保障に対する国民の意識が急速に高まっている。今後、日本の安全保障はどうあるべきか。岸田政権の取り組みは評価できるのか。
今回、自身も「国防がライフワーク」と語り、自民党きっての外交・安全保障通と評される石破茂氏に、ジャーナリストでノンフィクション作家の塩田潮氏が単独インタビューを行った。(このインタビューは2023年5月17日に行ないました)

塩田潮(以下、塩田):現在の日本周辺の安全保障環境をどう捉えていますか。

石破茂(以下、石破):北朝鮮はミサイルの発射能力を確実に高めていて、決して軽視してはいけないと思っています。独裁体制は強固なものになっています。中国の軍拡も、特に海軍力、宇宙、サイバーの能力の向上は目覚ましいものがあります。ロシアのウクライナ侵攻も、私は簡単には終わらないと思っています。終わらないほうがいいと思っている勢力もある。

わが国の周辺はわれわれ民主主義国とはまったく異なる政治体制の北朝鮮、中国、ロシアという核保有国に囲まれている。この状況は極めて憂慮すべきで、能力の点からすれば、北東アジア、インド・太平洋の軍事バランスが大きく崩れつつあると認識しています。

一方で、現実問題として、中国の台湾への武力侵攻の可能性自体は、そう高くはないと思っています。アメリカのフィリップ・デービッドソン・前インド太平洋軍司令官が、2027年までに台湾有事が生起する可能性は非常に高いと言って、日本で大きく報道されましたが、その後、マーク・ミリー統合参謀本部議長は、台湾の防衛能力の強化を示唆しました。われわれは冷静に抑止力を構築すべきで、その意味では「今日のウクライナは明日の台湾」みたいな言い方には論理の飛躍があり、懸念しています。

防衛力強化の決断は正しい

塩田:現在の安全保障環境の下で、岸田文雄首相の対応をどう評価していますか。

石破:防衛力の強化に踏み切られた決断は正しいと思います。今後、実際にいかなる事態が生起するかを詳細にシミュレートして、たとえ地味でも必要性の高い能力を優先的に構築すべきです。

朝鮮半島有事、台湾有事は、どんな状況で、どのような段階を踏んで起こるのか。そのときにあるべき防衛力とは何か。おそらく、対GDP(国内総生産)比2%とか、5年間で総額43兆円という数字は、いろいろな事情から、積み上げの議論によるものではなかったような気がします。そうであればなおさら、自民党内でまず基本的な考え方を打ち出さなければならない。

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