――シティ側は「総還元性向10%未満が放置されてきた」という主張をしています。こうしたことがアクティビストに狙われるきっかけになったのではないでしょうか。
われわれはもともと財務体質が非常に脆弱だった。そこに2011年の東日本大震災で千葉製油所が被災し資本を毀損し、2015年の原油価格下落で在庫評価損も広がった。こうした経緯もあって、しばらく株主還元より資本の厚みを増すほうを優先させてきた。一時は無配にもなった。
その後、何とか収益を立て直し、第6次中期経営計画(2018~2022年度)、あるいはその前も含めて安全性を高めるところに重心を置いてきた。株主還元策が非常に小さかったのは事実だ。いま、財務体質は一定程度の改善が図られつつあり、株主還元も厚くしてきている。2023年度からの7次中計では「総還元性向60%以上」を打ち出している。業界を見回しても高めの還元方針だ。
――当初はシティ側との対話は建設的だったのでしょうか。
2022年4月以降、直接の面談、リモート面談、書簡のやりとりなどで対話はしてきたつもりだ。当初は村上さん側も「20%以上買い上げるつもりではない」と明確に言っていたので、われわれもその範囲内でいろんな企業価値向上策について対話をしてきた。
ところが、昨年11月18日に30%以上買いたいという話が始まって、最後はほぼ一方的に買い増すんだと宣言された。30%以上となるとかなり大きな経営の支配権になる。その時に先方が言っている製油所の統廃合、再エネ事業の切り離しというのは、株主共同の利益にマイナスになると判断している。
よく練られた提案ではないと受け止め
――「一貫性を欠く提案」という認識でしょうか。
シティ側の要求には、製油所を閉める検討を行い、地元・同業他社とも話し合いをしろと書いてある。われわれは「10年は製油所の閉鎖の必要はない」と言っている中で、地元との話し合いをすればいたずらに不安を与え、われわれのレピュテーションも毀損しかねない。まして他社との話をするのは独占禁止法上、大きな問題だ。
こうした提案を平気でしてくること自体、われわれの考えとまったく相容れない。よく練られた提案ではないと受け止めている。他の株主さんがもう少し理解できるような提案がないとなかなか対話にならない。
――直近では、ENEOSホールディングスがJX金属の分離・上場を発表し、JERAやNTTが3000億円を投じて再エネ事業者のグリーンパワーインベストメント(GPI)を買収することが話題になっています。再エネ事業を高値で売れるタイミングにも見えます。
JX金属やGPIは、事業基盤や人がそろっていて、そうしたプラットフォームに価値がついているのだと思う。一定程度の収益基盤ができていて、これがもし適正に(市場に)評価されていないのであれば切り出しも一つの方法だろう。
一方、今これから成長させたいと思っている再エネ事業を切り出して、きちんと拡大できるのか。資金調達や人材確保の面でわれわれが描いている成長軌道に乗せられないのではないか。
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