死の現場を支える「葬送の仕事師」の正体 すべては「不在の在」を演出するために
2020年以降の日本が、どんな世の中になっていくのか、気になっている方も多いことだろう。市場全体がシュリンクし、指標となるさまざまな数値が低下していくことは間違いないのだが、ピークを迎えるものも少なからず存在する。そのひとつは死者数だ。
2013年の死者数、約126万人。これが2027年以降には、団塊の世代が80歳代になるため「大量死」の時代が到来すると言われている。2030年には27%増の約161万人、2040年には約167万人という死者数が予測されており、火葬場不足などの事態も現実味を帯びてきた。
岐路に立つ葬儀業界
そんな未来を間近に控え、葬儀業界が活況を呈しているのかと思いきや、そうとも言い切れないのが実情である。現在1兆6000億円という市場規模だが、家族葬、直葬が増え、合理化を求める傾向が顕著になってきているのだ。さらに今後、平均寿命が延びて死亡年齢が上がると、医療、介護、住まいなど高齢期を生きるために必要な支出が優先され、一件あたりの葬儀費用が下がってくることも必至であるという。
本書『葬送の仕事師たち』は、このような岐路に立つ葬儀業界において、死の現場を支えるプロフェッショナルたちの姿を描いた一冊である。
葬儀とは誰にとっても一生に一度しか訪れないライフ・イベントであり、聖と俗を隔てる「結界」のような空間で行われる。その中で裏方として、時には共演者として現場を支えるモノトーン世界の黒子たち――葬儀学校の学生、葬儀社社員、納棺師、エンバーマーから火葬場職員まで。言わば「弔いの商い」という観点から、現代の「死」を照らし出す。
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