この「本質を掴む」という脳の働きは非常に大事です。
私自身の例で恐縮ですが、私が過去、記憶術の世界に初めて足を踏み入れたとき。世の中に出回る「記憶術」と名の付くもの全てに片っ端から目を通し、リサーチをしたことがあります。
どの流派も一見個性的に見えますが、膨大な資料を読み込むうちに、それらを抽象化できる(=本質を掴める)ようになりました。
「結局こういうことでしょ?」が抽象化
「抽象化ができている」状態とは「それって、結局こういうことでしょ?」というフレーズが出てくるときです。
実際、私は巷のあらゆる記憶術を吸収した後「記憶術って、結局『感情を動かして覚えること』でしょ?」と明確に感じられたのです。
その後、さらに脳科学についての学びを深め、記憶の仕組みと感情に密接な関係があると突き止め、「感情をより刺激できる記憶法」(IP化)を開発するに至りました。
言い換えると既存の情報を鵜呑みにしすぎず、自分の脳内にある既存の知識と組み合わせて再編集したことで、新しい考え方を生み出せたのです。
みなさんにも「具体」と「抽象」、異なる次元を自由に行き来できる視座を手に入れてほしいと願っています。
とはいえ、特別な訓練なんていりません。イメージ化(IP化)を軸としたA4・1枚記憶法を実践することで、抽象化能力は自動的に磨かれていきます。
ここで、ひとつ注意してほしいことがあります。
現代社会でメディアからの情報を鵜呑みにしつづけていると「抽象化能力を養いにくくなる」という点です。
情報の発信者が親切になりすぎて、受信者が頭脳を働かせるべき機会がどんどん奪われてしまう傾向があるからです。たとえば、テレビ番組やYouTube動画の丁寧すぎる字幕(テロップ)。
視聴者は、発言やその内容どころか出演者の気持ちまで、字幕で知らされるようになっています。
言い換えると「脳を働かせる」という負担が軽くなりがちなのが現代なのです。
使われなくなった脳は、どんどんサボるようになり、やがては衰えていきます。その場の「空気」や文字の「行間」、要は情報の「背景」を自分で読み解こうとする姿勢を忘れないようにしてください。
そして好奇心を働かせて多くのものに触れ「それって、結局こういうことでしょ?」と頭の中で抽象化する癖をつけてみましょう。
ただしリアルな会話で「それって、こういうことでしょ?」というフレーズを乱発すると「この人はすぐに話をまとめたがる」と、誤解されかねません。「リアルな会話では使わない」という原則をおすすめします。
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