子育て教員「夫や実家の協力ないと破綻」のリアル 5人の教員が語った「個人の工夫だけでは限界」

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(Eさん)
教員歴28年。公立小学校教諭。3人の子どもは成人し、現在は小学1年生の学級担任などを担当。

石田:最後に、子育てしながら教師をしてきたベテランのEさんにお話を伺います。Eさんは、教員歴28年とのことですが、以前から子育てをしながら働く女性教員の方々は、このように負担が大きかったのでしょうか。

家族の時間は、部活動ができない雨の日だけ

E:3人の子どもはもう全員成人していて、最後に育休を取ったのは約20年前ですが、決して楽ではなかったです。主人も中学校の教員で、子どもが小さかった頃は運動部の顧問や生徒指導を担当していたので、22~23時の帰宅が当たり前。ほぼ私のワンオペレーションだったため、家事は工夫していました。当時は義母と同居しており子どもを預けることはできたので、保育園に一度子どもを迎えに行ってからまた仕事に戻るといったことも、日常的にやっていましたね。

石田:夫婦で教員をやっていると、家族の時間もほとんど取れないのでは?

E:はい。主人が子どもたちを動物園や遊園地に連れて行けるのは、部活動ができない雨の日だけ。そのうち、私が1人でどんなところにも子どもたちを連れて行くというのが当たり前になっていきました。

石田:もしお義母様と同居していなかったら、仕事は回っていたと思いますか。

E:無理ですね。義母以外にも、義父、私の母と、いろんな人の手を借りながら何とかやってこられたという状況でした。

石田:昨今では実家の力を借りられないご家庭も多いですが、子育て中の女性教員にはどのような配慮が必要だと思いますか。

E:今の学校では、専科の若い先生が時短で復帰していますが、おそらく管理職が担任を外してあげていると思います。校務分掌もさほど負担のない内容になっています。育休明けで潰れないようにと配慮をしてくださったのではないでしょうか。しかし本来、そういった配慮はどの学校でも絶対に必要です。そのうえで教員個人がいかに工夫するかという問題だと、そうした理解が広がればいいなと思っています。

石田:ありがとうございました。現在、学校現場では働き方改革が叫ばれていますが、最先端の家電の活用や授業の工夫などは、個人レベルの取り組みとして大いに参考になりそうです。一方で育児中の女性教員の仕事の過酷さは、学校の配慮や、パートナーおよび実家の協力の度合いなどに大きく左右されてしまう実態が改めて鮮明になりました。次回は、学校教育に必要な体制や施策などについて考えたいと思います。

(構成:佐藤ちひろ)

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石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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