北海道「釧路湿原」侵食するソーラーパネルの深刻 天然記念物も生息する日本最大の湿原に異変

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特に建設が目立つのが、1987年に指定された国立公園区域の外、南部の湿原地帯。市街化調整区域として開発が抑制されてきたが、太陽光発電施設は建築基準法上の建物ではないため設置できる。釧路市には景観条例があり、高さ8メートルを超える工作物を設ける際には届け出が求められるが、ソーラーパネル設置には必要ない。

釧路湿原は積雪量が比較的少なく、日照時間が長い。それになんといっても平坦な土地で、市街化調整区域の近くには送配電網があり、太陽光パネルにつなぐことができる。太陽光発電施設が次々に出現した背景には、こうした「好条件」があった。

発電施設付近でタンチョウの営巣を確認

市街化調整区域の湿原に並ぶソーラーパネルの近くに行ってみた。釧路市鶴野にある発電所は、大阪の発電事業者が3年前に運転を開始し出力は約2000kW近くある。パネルが並ぶ南端から見ると、土砂を入れて整地したうえでパネルを設置したとわかる。

釧路市鶴野のメガソーラー。パネルが並んだ南側には湿原が広がっていた(撮影:河野博子)

NPO法人「トラストサルン釧路」の副理事長でタンチョウの研究者、松本文雄さんによると、この発電所の付近はNGOによる調査でタンチョウの営巣が確認されてきた場所。また、日本野鳥の会・釧路支部長の黒澤信道さん(66歳)によると、タカの仲間で環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類のチュウヒも繁殖していた。

「野鳥観察仲間が繁殖を確認していた。チュウヒはネズミなど湿原の小動物を食べるが、こうしたエサ動物がいなくなるし、用心深い鳥なので、もう巣を作る状況ではないと思う」と黒澤さんは残念そうだ。

釧路市山花の太陽光発電施設の場合、盛り土をした上にソーラーパネルが設置された(撮影:河野博子)

このメガソーラーから西に8キロ、市街化調整区域の釧路市山花にある太陽光発電施設を見た。法律で発電設備、発電事業者、保守点検責任者の連絡先、運転開始年月日などを書いた看板の設置が定められているが見当たらない。周囲の湿原に比べて高さ2メートルほどの盛り土をし、パネルが設置されている。

この発電施設付近で昨年春、タンチョウの営巣が確認された。タンチョウは樹木の上に巣を作るコウノトリなどと異なり、湿原の中にヨシなどで巣を作り卵を抱く。

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