北海道「釧路湿原」侵食するソーラーパネルの深刻 天然記念物も生息する日本最大の湿原に異変
出力50kW未満の小規模な太陽光発電施設の場合、研究者や市の関係者が知らないうちに出現したケースも多い。今年4月に運転開始した太陽光発電施設の場合、道を挟んで反対側と同様の湿原だったが、あっという間に整地されてパネルが並んだ。
こうしたソーラーパネルの「拡大圧」に、どう対抗するのか。キタサンショウウオの研究と保全活動を続ける照井さんに聞くと、意外な言葉が返ってきた。「基本的に太陽光の事業って止まらないと僕は思う。事業者は合法的にやられていて別に悪いことをしているわけではない。再生可能エネルギー自体、推進されているわけだし」
誰も損をしない方法はないのだろうか。照井さんは考え、キタサンショウウオが生息し、すぐそばまで太陽光発電施設が迫る小さな土地を買い取ったらどうだろうか、と思いついた。昔、自然保護や空港建設反対運動の際の戦術、「一坪地主」に似ているかもしれない。
「インターネットで調べてみたところ、太陽光発電用地とか資材置き場にどうですかと、100坪くらいの土地が何か所も売りに出ていた。キタサンショウウオの生息地も何か所か見つかった。かつて原野商法により売られた土地もあるので、土地を買い取る活動を進めれば安く売りたいとか、寄付したいと思う人もいるかもしれない」と照井さん。
今年3月には、2カ所の土地(合計1400㎡強)を計百数十万円で購入した。照井さんが代表を務めるNPO法人は、調査研究活動のほか環境アセスメント調査の仕事もしており、購入費は法人の資金から捻出した。35年前から土地を買い取り、自然保護地を作って観察会を開く活動を続けるNPO法人「トラストサルン釧路」などの団体にも相談して、今後、小さな土地の買い取りを進めるという。
国立公園区域内にもメガソーラー
国立公園区域外の湿原での太陽光発電建設ラッシュを見てきたが、メガソーラーは国立公園区域内にもある。釧路町の町有地に建つ「釧路町トリトウシ原野太陽光発電所」は大林組のグループ会社が建て、2017年4月に運転開始した。このメガソーラーの事業者は自然環境や野鳥などへの影響を調査しているが「外部に公表していない」(大林クリーンエナジー)。
前出の日本野鳥の会・釧路支部長の黒澤さんは建設が始まる前の2014年、調査を担当した研究者から相談を受けたため事業地に来てみた。国営草地化事業により牧草地にされた後、使われず放置されていた場所で、すでに湿原ではなかった。
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