北海道「釧路湿原」侵食するソーラーパネルの深刻 天然記念物も生息する日本最大の湿原に異変
釧路市山花の太陽光施設のすぐそばにタンチョウの営巣地を見つけたのは、NPO法人・環境把握推進ネットワーク-PEG理事長の照井滋晴さん(40歳)。実はタンチョウの調査ではなく、両生類のキタサンショウウオの調査をしていて、たまたま見つけた。
キタサンショウウオは、釧路市指定の天然記念物。3年前に環境省のレッドリストで「準絶滅危惧種」から「絶滅危惧IB類」へと危険度が2ランク上がった。
昨年1月には種の保存法に基づき、販売目的の捕獲が厳罰化されるなど保護策が強化された。体長11センチと小さく湿原の中で生まれ、動いてもせいぜい100mという狭い範囲で生涯を過ごす。
照井さんは釧路教育大学在学中から研究を続ける。「可愛らしいということもあるが、そもそも1954年まで北海道にいることすら知られていなかった。生態や生息状況はわからないことだらけで、研究をやめられなくなった」と語る。
キタサンショウウオの生息適地で建設ラッシュ
釧路市文化財保護条例に基づき研究・保護活動を行う釧路市立博物館は、照井さんはじめ京都大学などの研究者とともに、これまでの知見をもとに「釧路市内キタサンショウウオ生息適地マップ」を作成した。その結果、生息適地と太陽光発電施設の設置が進むエリアが重なることが判明した。
市は、この生息適地マップを2021年から公表。現在は市のホームページ上で示され「太陽光パネルを設置したい」「土地を整地したい」という地権者や事業者に向けて「キタサンショウウオの保全に協力して」と呼びかけている。
その結果、市博物館の担当者のもとには地権者や事業者からの問い合わせが増えた。2021年12月から1年間に「そこは生息適地です」と答えたものだけで22件に上った。
キタサンショウウオの生息適地が広がり、実際に生息が確認された場所も多い釧路市南部の市街化調整区域。そこはまた太陽光発電事業者がパネルを貼りたい場所であり、建設ラッシュが起きている。
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