【食中毒】鶏肉料理で腹痛、ブームの調理法に注意 吐瀉物処理の盲点、「掃除の前に消毒」が超重要

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厚生労働省の報告では、近年の患者数は年間2000人程度で推移していて、細菌性感染症の中で最も件数が多い。

感染力は原因菌のなかで比較的強く、数百匹という少ない菌でも感染するが、毒性はそれほど強くないので、感染しても気づかないまま治ってしまうことも少なくない。「このため、患者数は氷山の一角」(高橋さん)という。コロナ禍だったここ数年は患者数が減少傾向にあるが、高橋さんによると、「コロナ禍での生活形態との因果関係は明らかになっていない」そうだ。

食中毒統計資料「年次別食中毒発生状況」より編集部で作成

「食材の加熱不足」が原因

カンピロバクターは、鶏、あるいは牛や豚、羊といった家禽、家畜の腸管内に棲んでいる。大腸菌など、ほかの食中毒の原因細菌と違って食材のなかで増殖することはない。そのため、「食材を放置して食中毒が発生する」というよりも、むしろ家庭や飲食店などで「食材の加熱不足」で起こることが多い。

「鶏や牛にとってカンピロバクターは常在菌なので、腸内に存在していても気づかない。そのまま流通してしまうのです」と高橋さんは説明する。

とくに鶏の保菌率が高く、厚生労働省の調査によると、スーパーや食肉店で販売されている鶏肉の2〜9割、ブロイラー(国産鶏肉)の2〜7割でカンピロバクターが見つかっている(検査方法などの違いなどで汚染率が異なる)。一方で、牛や豚は鶏に比べて比較的汚染率が低めのようだ。

当然ながら、食中毒を起こす原因は鶏料理が多い。今年発生したカンピロバクター感染症の事例を見ても、特定されていないものを除けばほぼ鶏料理だ。考えられる原因料理としては、鶏レバーやささみなどの刺身、鶏肉のたたき、鶏わさなどの半生食の料理、あるいは加熱不足のから揚げ、鶏のソテーなどが挙げられる。

食中毒統計資料「食中毒発生事例(速報)」より編集部で作成

もちろん、注意したいのは鶏そのものだけではない。「細菌が付着した包丁やまな板で切った野菜を生で食べるのも危険」(高橋さん)という。気になる卵については、高橋さんは、「サルモネラによる食中毒のリスクはありますが、カンピロバクターは大丈夫でしょう」と話す。

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