では、カンピロバクターによる食中毒はどんな症状が表れるのか。
潜伏期間は2日〜1週間程度で、主な症状は下痢や腹痛、嘔吐。発熱(38℃程度)や頭痛、倦怠感、右下のわきの痛み、虫垂炎と似た症状が出ることもあるそうだ。子どもの場合は下血を伴う下痢が見られる。
自宅での対処で気をつけること3つ
このような症状が出たときの自宅での対処についての注意点を、高橋さんはこう話す。
「1つめは、下痢では下痢止めを使用しないこと。下痢は摂取した有害なものを体外に排出する正常な防衛反応なので、止めてしまうと菌が腸に留まったままになる恐れが高いです。下痢止めではなく、プロバイオティクスのサプリや胃腸薬、整腸薬は服用してもかまいません」
カンピロバクター感染症には抗菌薬(抗生物質)が有効だが、別の病気で処方してもらって、まだ自宅に残っている抗菌薬を自己判断で服用するのも、NGだ。これが2つめ。
そして3つめは、脱水症状への注意だ。
下痢をすると、それだけで水分が体内から奪われる。そのぶんの水分補給は、できるだけ行ったほうがいい。普通の水でもいいが、ミネラルなどが入っているお茶やスポーツドリンク、経口補水液でもよいそうだ。
では、医療機関を受診すべき状態とはどのような場合だろう。
「しばらくしても症状が治らず、我慢できないときは受診を。吐き気や嘔吐が強い場合も受診したほうがいいでしょう。嘔吐などで水分が摂取できないと脱水症状になりやすい。その場合も医療機関では点滴などの処置ができます」(高橋さん)
カンピロバクター感染症は、持病がない健康な人なら発症してもそれほど重篤にはならない。2〜3日お腹が痛くて動けないということはあるものの、先に挙げた対処法を行ったり医師から処方された抗菌薬を服用したりすれば、軽快する。
注意したいのは、抵抗力の弱い小児(5歳未満の乳幼児)や高齢者(70〜80代以上)、そして持病で薬を服用している人だ。とくにがんや膠原病などで抗がん薬や免疫抑制薬を使っている人は、免疫が抑制されているため重症化しやすい。
また、1000〜2000例に1例程度とまれだが、ギランバレー症候群という免疫系の病気を合併することがある。
ギランバレー症候群は体の免疫反応が自身の神経を誤って攻撃してしまう病気で、筋肉に力が入らなくなり、手足の麻痺や顔面神経麻痺、まぶたの筋肉が垂れ下がる眼瞼下垂(がんけんかすい)、呼吸困難などが起こる。カンピロバクターに対する免疫反応が、誤って自身の神経を攻撃することで発症することがわかっている。
「カンピロバクター感染症を発症した後、1〜3週間後に手足に力が入らなくなるなどの症状が出てきたら、すぐに近くの病院を受診してください」と高橋さんは注意を促す。
嘔吐や下痢があったとき、感染者の汚物や吐瀉物の処理をする場合の注意点も聞いた。
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