ドラッカーが日本に遺した「希望のメッセージ」 「人口問題」は社会的イノベーションの大好機

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日本社会には、ドラッカーが求めた健全さがあった。経済・社会が大きな問題に直面している日本が、ドラッカーのメッセージをどう生かすべきかについて語り合う(写真:metamorworks/PIXTA)
団塊世代を中心に日本で愛読され続けてきたドラッカー。チャーチルに激賞されたデビュー作『「経済人」の終わり』や世界中の経営者の愛読書『マネジメント』、さらには的確に未来を予見した『見えざる革命』や『新しい現実』といった名著はどのように生まれたのか。
ドラッカーと30年余にわたる親交をもち、近著『教養としてのドラッカー 「知の巨人」の思索の軌跡』を上梓した小島明氏が、長年ドラッカーを愛読してきた元日銀総裁の白川方明氏、元IMF日本政府代表理事の田中琢二氏らと、ドラッカーのメッセージをどう生かすべきかについて語り合う。

小島明(以下、小島):ドラッカーが初めて来日したのは1959年、日本が戦後復興を終えて高度成長に移る前です。そのとき、ドラッカーは日本の人たちに会い、経営者に会って、「この国は経済大国になる」と確信したといいます。日本人の真面目に努力する姿、協力する姿勢、そういう空気、カルチャー、社会を見て、「大きく経済成長する」と思ったそうです。

健全な日本社会を高く評価

小島:日本社会には、彼が求めた健全さがあったんですね。彼がイギリスからアメリカに移住したとき、アメリカは大恐慌後の混乱のなかにあった。そのときを思い返して、ドラッカーはこんなことを言っていました。「当時、アメリカの経済は病んでいたけれども社会はしっかりしていた。今、アメリカ経済は元気だけれども、社会は傷んでいる」。

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ドラッカーは、日本社会の健全性を大事にして、捨てないでほしいと言っています。コミュニティーや社会的な連帯感は日本のいちばんの伝統だし、大事にしてほしいと言っていましたね。

田中琢二(以下、田中):ドラッカーは日本のいいところについて、日本人の美意識も含めて評価していますね。それから、やや茫洋とした言い方ですけれども、やはり戦後、日本の登場によって、西欧だけの社会でないアクターが生まれたことについて、日本が世界経済の多様化に果たした役割に対する評価、これが非常に大きいことは、読んでいてすごく感じます。

小島西欧中心の世界史が、日本の登場によって本当の世界史になったわけですね。

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