さきごろ「国民負担率」が大きな話題になった。国民負担率とは国民の所得に占める税金や社会保険料などの負担割合のことだが、財務省は今年度(2022年度)にそれが47.5%となる見込みだと発表したのだ。
Twitterでは、江戸時代に農民が領主に納める年貢割合を表現した「五公五民」がトレンド入りした。ただでさえ、円安と資源価格の高騰による光熱費や物価の上昇に身を削って対処している国民にとって、これ以上の負担増は生きるか死ぬかの問題に直結しかねない危険水域に突入することを意味する。
「新しい資本主義」ではなく「新しい自己責任」
日本の国民負担率は、1979年度に30%台となり、1994~2004年度までは34~36%台で推移していた。しかし、高齢化による社会保険料の増加などにより2013年度から40%台になり、2020年度に初めて47%を超えた。しかも「失われた30年」と呼ばれる期間、経済成長は鈍化。実質賃金は低迷し続け、中間層は衰退していった。収入が上がらず、非正規雇用や個人請負化が拡大し、生活不安が増大する状況下で、到来しつつあるのは「新しい資本主義」ではなく「新しい自己責任」である。
岸田文雄政権が昨年11月に正式決定した看板政策「資産所得倍増プラン」がそれだ。その趣旨は、「中間層がリターンの大きい資産に投資しやすい環境を整備すれば、家計の金融資産所得を拡大することができる。また、家計の資金が企業の成長投資の原資となれば、企業の成長が促進され、企業価値が向上する。企業価値が拡大すれば、家計の金融資産所得はさらに拡大し、『成長と資産所得の好循環』が実現する」(資産所得倍増プラン(案)/内閣官房)ということらしい。だが、そのような資金のある人々がいったいどれだけいるのか。
金融資産を保有していない、いわゆる「貯蓄ゼロ世帯」はここ10年で「2人以上世帯」では20.6%から31.2%に、「単身世帯」では29.9%から46.4%に上昇している(金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」、2007年と2017年との比較、2018年以降は設問内容が見直され、データが不連続のため省いた)。金融庁も2019年に「現役世代については、収入が減少傾向。金融資産額は、30代・40代の家計を中心に減少しており、資産形成が十分に行えていない」と指摘している(人生100年時代における資産形成/金融庁/2019年4月12日)。
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