国民負担率47.5%の先に待つ日本の最悪シナリオ 大増税時代「唯一の希望は投資」超格差化に拍車

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はたして「自助」充実ニーズとは何のことなのだろうか。コロナ禍で盛んに用いられた「自粛要請」と響きがよく似ているのは偶然ではないだろう。そこには、自ら進んで行うよう国民を“善導”するニュアンスが潜んでいる。今後の経済的な困難を生き残れるかどうかは「自助」次第と言っているのだ。

そもそも岸田首相は2021年の自民党総裁選で「令和版所得倍増」を掲げていたが、いつの間にか「所得」が「資産所得」へと修正された経緯がある。「成長と分配の好循環」をコンセプトにした「新しい資本主義」の実行計画は成長に軸足を置かれ、分配重視という当初の目論見は後退した。いや「分配」の内には「投資のリターン」が含まれていると言うかもしれない。だが、投資には一定のリテラシーが必要で、元本割れのリスクがつねに付いて回る。いずれにせよ、格差是正の道具立ては整えたというわけだ。

目を覚ました預貯金がどうなろうと

ただし、格差是正を行う主体は政府ではない。「あなた」自身が自らの責任において行わなければならないのだ。もちろん、それでなけなしのお金が溶けてしまっても政府には何のとがもない。もとより政府はわたしたち国民が優秀なトレーダーになることを望んではいない。岸田首相がロンドンで投資家向けに行った基調講演の言葉を借りれば、「眠り続けてきた1000兆円単位の預貯金をたたき起こす」ことが目的だからだ(ギルドホールにおける岸田総理基調講演/首相官邸/更新日:2022年5月5日)。究極的には目を覚ました預貯金がどうなろうと知ったことではないのだろう。

このような時流を反映してか、書店には投資関連の書籍が山積みだ。射幸心をあおる売り文句が並び、新NISAの時代に便乗している。「年間100万円の配当金が入ってくる」「30万円で始めて、5年で1000万円」「月20万円の不労所得を手に入れる」……。

出版書誌データベースによると、タイトル・副題に投資を含む本は、2019年は141点だったが、2021年は177点、2022年は 188点と増加傾向にある。出版関係者に聞くと、最近は生き方本でもお金を増やす資産運用の要素が入ったものが売れるという。 

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