インスタグラムやYouTubeなどにおける投資系インフルエンサーの影響力も増している。低所得者向けのFIRE(経済的自立と早期リタイア)までが登場し、金銭的な自己防衛とサバイバルを促す空気が醸成されている。
もはやそこには社会保障を軽んじる政府に対する批判といったものはなく、賢く投資して逃げ切れという先の報告書と変わらない精神があるだけだ。これは社会課題を個人レベルで解決することを推奨する考え方であり、若年者の貧困や老後破産は本人の責任という見方を強めていくことだろう。
2月28日、厚生労働省の人口動態統計の速報値が公表され、2022年の出生数が過去最少の79万9728人となり、統計開始以来初めて80万人を割り込んだことが話題になったが、経済的な災厄を考えれば当然の帰結でしかない。
「異次元の少子化促進」をずっとやってきた
社会学者の山田昌弘は、少子化の日本的特徴として、日本人は「生活リスク」を大変嫌うと述べ、「子どもに豊かな生活や十分な教育を保障したいから、それが実現しないリスクが高いと思えば、結婚しない、子どもをもたない、子ども数を少なくするという選択がとられる」と主張した(「日本で少子化対策はなぜ失敗したのか」-コロナ後の家族は変わるのか?-/人口動態と経済社会の変化に関する研究会第一回報告/財務省財務総合政策研究所/2020年10月20日)。
日本では、まさに不作為という名の「異次元の少子化促進」をずっとやってきたのである。経済的な困窮や雇用の不安定化がコロナ禍で進行したが、次は恐ろしいことに血も涙もない「大増税」が待ち構えている。
多くの国民は糊口をしのぐのが精一杯で、資産運用に注力する余裕などないだろう。そこで持てる者と持たざる者の差がさらに開く「超格差化」に拍車が掛かるのは目に見えている。わたしたちは、唯一の希望は投資しかないと言いくるめられ、いまだ経験したことのない地獄に向かって突き進んでいる。
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