東京で「食べるに困る子」が増えている明確な証拠 雇用難・物価高がシワ寄せ、食の支援の整備は急務だ
コロナ禍に入って3年。世界的な景気減速の気配は漂うものの、日本国内の主要な繁華街や行楽地などには徐々に人や活気が戻ってきており、今や休日になれば郊外のショッピングモールやファミリーレストランなどは家族連れでにぎわっている。
ところが、そうした人々の明るい顔に隠れて、経済的事情によって「食べることに困る」子育て・単身世帯が静かに増えている。
日本経済が抱える問題
どこか遠くの国のことではない。日本の首都・東京という都会のど真ん中の話だ。2020年に厚生労働省が公表した「2019年 国民生活基礎調査」で日本の子どもの貧困率は13.5%と7人に1人が、貧困状態にあることが指摘されていたが、現時点でさらに悪化している可能性がある。現場を歩くと、「日本経済が抱える問題の縮図」ともいえる断面が見えてきた。
昨年12月中旬、東京・池袋を起点にする西武池袋線に乗って、西武豊島・有楽町線、都営大江戸線と交差する練馬駅(東京都練馬区)に向かった。駅前の商店街を抜けていった先の住宅街の一角に本部を構える「東京子ども子育て応援団」を訪れるためだ。設立者であり事務局長の河野司さんが、2015年に練馬バプテスト教会を借りて設けた子ども食堂から活動を始めた公益社団法人である。
もともとは経済的に困窮している子育て家庭に食材を届けたり、家庭に困難な問題を抱えた子どもたちの居場所を提供したり、塾に行けない子の学習支援をしたりしてきた。コロナ禍に入って子ども食堂や居場所の提供、学習支援の活動が制限されたことから、食材の宅配範囲を広げ、経済的に困窮する世帯に食材を無料配布する「フードパントリー」と呼ばれる事業を展開するようになった。
食品企業の製造工程で発生する規格外品をはじめ、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品を企業や生産者から無償で寄付・寄贈してもらい、困窮している人たちや福祉施設などへ無償で提供する団体・活動を「フードバンク」と呼ぶ。フードパントリーはそれよりも相対的に小規模に事業を行っていて、独自に食材を集めたり、フードバンクから提供を受けた食料を主に個人向けに配布したりする団体や場所・活動を指す。