東京で「食べるに困る子」が増えている明確な証拠 雇用難・物価高がシワ寄せ、食の支援の整備は急務だ
「2020年には延べ約2万5000人に食材を配布していましたが、2022年には延べ約3万5000人に増えました。コロナ前から日本において食の支援が必要な人は少なくとも200万人いたと推計されるのですが、コロナでさらに増えたと思います」。セカンドハーベスト・ジャパンの政策提言担当マネージャー、芝田雄司さんはこう話す。
背景には、コロナ禍により接客・サービス業を中心として仕事が大幅に減ったり、なくなったりしたうえに、昨年2月に始まったウクライナ戦争に端を発した世界的な物価高が相まったことがある。「食べることに困る」ほど追い込まれているのは所得水準が高くなく、身分が不安定な非正規雇用者が大黒柱になっているような世帯。世界的に所得・資産格差が広がっていく中、もともと経済的に裕福ではない人たちに雇用難・物価高がシワ寄せされているのだ。
大きな問題はこうした「食べることに困る」貧困の状況が、端からはなかなか見えにくいうえに、セーフティーネットが十分でなく、当事者に情報が入って来にくいということである。
都会の貧困世帯の人は整った服装をしていて、見た目からは貧困だと判断がつきにくいと言われる。良くも悪くも地域の人間関係がウェットな地方ならば、「あの家庭は食べることに困っているらしい」という話が地域で共有され、助け合うこともあるかもしれない。
ところが、昔ながらの下町を別にすると、隣人との関係がドライな都会では、誰が生活に困っているかということに関心もなければ、そもそも情報が入ってこず、地域で助け合おうという動きにもなりにくい。
生活保護に頼りたくない貧困世帯の本音
生活に困窮している人たちを救う公的制度の1つに生活保護がある。ただし、一度、生活保護を受けてしまうと資産はすべて手放さざるをえなくなり、預貯金や借金もできず、保険にも入れなくなるなど、さまざまな経済的制約を受ける。だからこそ歯を食いしばってでも、生活保護を受けずにギリギリで耐えている貧困世帯は少なくない。
フードバンクやフードパントリー、子ども食堂といった「食の支援」をする団体や活動があっても、そうした情報すらも知らずに貧困に陥ったままの人々もいる。