吉川ひなの「母を許せない自分」を許すことから 「許す神話」は、自分を歪めてしまう一因にも

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「今まで親の問題に関する本は沢山読んできたけど、『(親を)許さなくてもいい』と書かれたものは他になかったんです。それをきっかけに『許す』ことについて深く掘り下げて考えるようになりました。

そもそも、どういう状態が許したことになるのか、ちゃんと考えていなかったことに気づきました。そんなことも知らずに『許すべきだ』と思い込んでいた状態はすごく無駄な時間だったし、まずはその定義を明確にするべきだと思ったんです。

改めて考えてみると、母に対して『許せない』と思う日もあれば、あまり気にならない日もあると気づきました。『許し』は実体がないもので、自分の都合で使っている言葉だと思うようになりました。

私にできることは、『今の自分はそんな感じ』と認めて受け入れること。自分に対する愛を持つことが『許し』なのかなと最近思うようになったところです。結局、人間が許せるのは自分自身だけなのかも。私は文章を書きながら答えを得ることが多いのですが、まさにこのエッセイを書くことを通して、この考えにたどり着きました」

自分を肯定するためにやっていること

子ども時代の辛い経験によって「ネガティブな脳の回路」が作られてしまったのではないかと吉川さんは明かしています。それを克服するために、自分を大切にすること(セルフラブ)を意識しているのだそう。

「私は自己否定してしまうことが多く『何でこうなっちゃったんだろう』とか、『さっきはあれで大丈夫だったかな』と思うことがよくあって、それがすごく苦しかったんです。

そういう時は、『私は大丈夫』とか『私は素晴らしい』などポジティブな言葉を選んで自分に言い聞かせる『アファメーション』の手法を取り入れることもあります。脳は唯一だませる臓器と聞いたので、ポジティブな言葉を使うことで自己肯定感を上げよう、という私なりの工夫です。

そんなことをしなくても、当たり前に自己肯定感が高い人に対して『いいな、憧れるな』とうらやましい気持ちもあります。でもこれまでの経験も、それによって時にネガティブになってしまいがちなのも含めて、自分自身。そういう自分も否定せず受け入れるということも、『セルフラブ』につながるって信じています」

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