吉川ひなの「母を許せない自分」を許すことから 「許す神話」は、自分を歪めてしまう一因にも

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吉川ひなの
「自分を大切にすることを意識している」と語る吉川ひなのさん
吉川ひなのさんは、書き下ろしエッセイ『Dearママ』(幻冬舎)で、母との複雑な関係に苦しんだ経験を告白している。
現在3人の子の母となった吉川さんは、母に対して「許さなくてはいけない」と強く思っていた。しかし「毒親」という言葉を知り、過去と対峙する中で「許さなくてもいい」と気持ちが変化するように。そこから本当の意味で自分自身を受け入れ、再生に向かって進むことができるようになっていったという。
「許す」とは何か、また子どもたちとの向き合い方について、吉川さんに語ってもらった。

許すことが解決だと思っていた

吉川さんに子ども時代の母への思いについて尋ねると、

「実体のない恐怖を植え付けないでほしかったし、支配しないでほしかった。尊重してほしかった。そういうことが沢山ありました」

と話してくれました。エッセイでは、幼い頃の記憶についてこう綴っています。

(中略)執拗なまでにわたしは体が弱いと言われたり、お化けが出るだの神に叛いたら悪魔がくるだの、とにかくわたしの幼少期は恐怖でいっぱいの日々だった。

吉川さんはそんな母に対して「許すことが解決であり、解放なんだ」と昔から思っていたといいます。

(中略)わたしは、やられた方よりやってしまった方が辛いんだと考えるようになった。

その考え方は本当のことから目を逸らし自分を歪めてしまう一種の逃げであることに気づいたのはほんの最近で、「毒親」という言葉に出会ってからだった。

人の罪まで自分で抱えてまるでいい人気取りだけど、その皺寄せは思っている以上に大きい。 でもそのときのわたしにはそう考えるしかなかった。

しかし2021年に発表した前著で生い立ちを明かしたことで変化が起こりました。吉川さんと母の関係が報じられる中で「毒親」という言葉を知り、Susan Forward(スーザン・フォワード)の著書『毒になる親』に出会ったことが大きなきっかけだったといいます。

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