ピーチとジェットスター、明暗分かれた3年 和製LCCの成功には、何が欠かせないのか

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最初に拠点に選んだ空港の柔軟性の違いを指摘する見方もある。ジェットスター・ジャパンが選んだ成田空港は、夜間の飛行制限があることが事業展開上、不利に働いた側面はある。一方、24時間空港でLCC専用ターミナルを持つ関空を舞台にしたピーチは、水を得た魚のようにその利点を生かしまくっている。

2015年2月までの実績でみると、成田空港の国内線利用者数は43カ月連続で前年同月を上回っている。LCCの就航によって首都圏を中心に国内線需要の底上げが図られたことは明白で、同じ成田空港を使用するバニラエアや3月から関西空港に加えて新千歳や福岡へ就航したピーチはいずれも高い搭乗率を維持している。

ジェットスター・ジャパンを退任した鈴木氏はアジア太平洋地域における金融・投資・出版など多岐に渡る業界でのビジネス経験を買われて社長に就任した。その鈴木氏にとって極めて専門性の強い航空業界の特殊性に加えて、日本で初めてのLCCビジネスモデルの構築や、社内の組織運営体制の整備など、まさに想定外の苦労の連続であったに違いない。

成田空港を拠点にして事業運営をする難しさもあったと思うが、早急な赤字体質脱却はもとより、国が推進する日本のLCC躍進のためには、残念ながら鈴木氏の退任は避けて通ることのできない人事だったと言えるかもしれない。

片岡氏が担う役割と重責

実質的な後任と言える片岡会長のやるべきことは極めて多い。収支改善を進めて経営基盤の改善・強化を図ることに始まり、日本のマーケット事情に則した営業体制づくりとブランドの浸透、さらに社内の活性化による生産性の向上を図ることなどである。日本におけるジェットスターグループの中心的役割を果たしてきた片岡氏の経験を生かして、新たにCEOに就任したターナー氏との調整役も務めながら日本における最適な運営手法の狭間でのかじ取りを求められることになるだろう。

LCCの世界では旺盛な訪日需要もあって、アジアを中心とした海外のLCC勢による日本への乗り入れ攻勢が続いている。国内では新生エアアジア・ジャパンも再参入を準備しているとされ、ますます競争が激化することが予想される。ピーチに比べて周回遅れのジェットスター・ジャパンには、新体制始動をきっかけとして安定した収益基盤の早期構築が求められている。

森崎 和則 航空経営研究所 主席研究員

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1951年生まれ。1975年慶應義塾大学卒、日本航空入社。総務、広報などを経験。2007年から航空経営研究所。拓殖大学工学部講師(非常勤)。

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