ピーチとジェットスター、明暗分かれた3年 和製LCCの成功には、何が欠かせないのか

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一方、ピーチと同じく就航から約3年を迎えながらも、対照的にもたついているのがジェットスター・ジャパンだ。オーストラリアの老舗LCC(格安航空会社)、ジェットスターの親会社であるカンタス・グループと日本航空(JAL)、三菱商事の3社が共同出資(設立当時)する和製LCCである。

ジェットスター・ジャパンは4月1日、創業時からの舵取り役だった鈴木みゆき社長が3月末で退任したと発表した。後任の社長は置かずにジェットスターグループ日本支社長の片岡優氏が代表取締役会長に、ジェットスターグループのオペレーション本部長、ジュリー・ターナー氏がCEOにそれぞれ就いた。

ジェットスター・ジャパンの業績は苦戦

鈴木氏の退任は「勇退」とは言い難い。ジェットスター・ジャパンは2012年7月に成田空港を拠点に国内線で運航を開始し、現在20機の航空機で国内19路線と関西~香港線を運航している。就航以来、他の2社に比べて短期間に保有機材数を増やして路線・便数を拡大したが、運航開始初年度の決算(2013年6月期)で88億円の純損失を計上。財務基盤安定のため同年11月に出資元であるJALとカンタス・グループが総額110億円を追加出資したものの、翌年度決算(2014年6月期)でも111億円の純損失に陥り、前年の追加出資分を1年で消失した。

この事態を受けて、JALとカンタス・グループは70億円(最大110億円)の追加出資を決めている。

2014年6月期決算では事業規模拡大と収入単価の改善に加え、搭乗率も76.7%と前年同期比で4ポイント以上改善した効果などで、営業収益は前年度の2.3倍に増加。ただ、コスト面の改善幅が少なかったため赤字を脱せられなかったとみられる。公表はされていないが同社固有の支出要素として、グループ本体に支払う「ジェットスター」のブランド使用料もコストを押し上げる一因になっているものと推測される。

ANAHDとの合弁解消によりバニラエアとして2013年末に再出発した旧エアアジア・ジャパンの場合も、日本で確固たる事業基盤は築けなかったと総括していいだろう。

再出発したバニラエアはここでは除いて、同時期に日本でLCCとしてスタートしたピーチとジェットスター・ジャパンを比べてみよう。その明暗はどこで分かれたといえるのだろうか。

一つの要因は、営業施策の差だ。ジェットスター・ジャパンは本体のジェットスターブランドの成功実績を基に日本における事業をスタートしたのに対して、ピーチはジャパンブランドを徹底的に追求した戦略を打っている。この手法が関西圏を中心に浸透して根強いファンを造り出したことや、アジアにおける日本ブームによる訪日需要の摘み取りにも好影響を及ぼしている。

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