そして、最後に、株式そのもののリターンが、賃金の成長率よりも有利になりがちな、「株式の有利性」がある。
手短に理由を言うなら、株式は資本のリスクを負担する者のために「リスクプレミアム」を織り込んだ有利な価格でプライシングされる傾向があるので、賃金の成長よりも有利なのだ。
また、「資本」を中心によく考えてみると、株式のリスクプレミアムは会社が提供する定型化された労働に甘んじ、「取り替え可能な労働者」として働き、それでも雇用が確保されて一定の給料が支払われることを志向する、「リスクを取りたくない労働者」が、自分の生産性を大幅に下回る賃金によって支払ってくれている、と考えるしかない。
以下の図を参照されたい。カール・マルクスの『資本論』的な経済理解になじみのある方には理解しやすいかもしれないが、ここでは「資本家=悪、労働者=善」とはさらさら考えてはいないし、資本には独自の運動法則があるなどといったタチの悪いフィクションに加担してもいない。
資本は「単に資本家の財産」
資本は単に資本家の財産であり、有利な投資先がなければ、消費されるだけの存在にすぎない。
「資本」をめぐる利害関係図
今のところ、経済の全体にあって、リスクを取りたくない労働者タイプAから、資本のリスクを取る資本家に利益が吸い上げられる動きが圧倒的だ。ちなみに、かつて一時期、銀行の利益吸い上げが大きかった時代があった。今は、資本家の立場が強い。
実は、資本家をカモにする労働者タイプBが現れるなど、現代の経済の分析としては不完全な図なのだが、リスクを取る資本家が得をして、リスクを取りたくない労働者が損をしやすい構造を理解しておくといい。
現実問題としては、会社側の狡知にあざとい面があるとしても、働く側にあまりに工夫がないことも指摘しなければならない。経済の世界は、リスクを取ってもいいと思う人が、リスクを取りたくない人から、利益をかすめ取るようにできているのだ。
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