スイスの大手銀行クレディ・スイス・グループが、スイス政府の救済措置の下に同業のUBSグループに買収されることになった。
「不運なカモ」になってしまった資本家
同行は昨年来、預金の流出が続き経営危機に瀕していたが、サイズ的に明らかに「大きすぎてつぶせない銀行」だった。毎度の不公平感はあるが、救済措置は仕方があるまい。
多少なりとも株式の価値が残ったが、筆頭株主であるサウジアラビアのナショナル銀行以下、株主は大損した。加えて、「AT1債」と呼ばれる債券が無価値になった。
これは、業績悪化の際には元本が減らされるリスクがある一方、金融規制上の自己資本に参入できる債券なのだが、今回は円貨換算で2兆円以上の債券が「価値ゼロ」だ。いずれも「金融資本」の大損である。同行にかかわった資本家は不運なカモだった。
クレディ・スイスの事実上の破綻の余波は、ドイツ銀行に波及した。同行の株価は急落し、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ。デフォルトが起きたときに損失を塡補するスワップ契約)の価格が急騰した。「最終的に同行は破綻するまい」と予想する専門家が多いが、「クレディ・スイスの次はドイツ銀行」という連想ゲームには大いにうなずける。
どちらも、かつては欧州の堅実経営を誇る伝統ある大銀行だったが、20世紀の終わりごろからアメリカ式の投資銀行ビジネスに傾斜して経営を大きく損なった。「投資銀行」と言うと偉そうに聞こえるが、証券会社の一種にすぎないのであるが、まあそれはいいだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら