「新しい資本主義」の次は「異次元の少子化対策」らしい。岸田文雄首相が掲げるキャッチフレーズのことだ。中身が漠然とした大風呂敷である点が共通だ。また、言っている首相自身も含めて政府の側で何をしたらいいのかをさっぱりわかっていない点も同じである。
岸田首相に「黒田節」は似合わない
ただ、言葉の響きは少しちがって聞こえる。今回は、首相が「子供関連予算倍増」と二言目を続けた。「異次元」と「倍増」の組み合わせは、10年前の日銀総裁デビュー時の黒田東彦氏を思い出させる。
金融緩和に「異次元」というよく考えると説明しにくい突飛な形容を与えるいっぽう、マネタリーベースを「倍増」するというこの上なく具体的な手段を組み合わせるプレゼンテーションは鮮烈だった。岸田氏はこの「黒田節」を真似たのだろう。
だが、倍増の対象が「予算」であったために、「財源はあるのか?」、「何に使うのか?」、「内訳は何だ?」というツッコミを受けてしまった。「子供が増えたら倍増もありうる」(木原誠二官房副長官の答弁)と答えるようでは、格好が悪かった。
推察するに、今時点での少子化対策の強調は、少子化対策支出が社会保障的支出につながることを見越し、そのためなら消費税の増税もありうる、と消費増税に誘導したい筋の振り付けだろう。
だが、この目的のためには、「予算」に言及するのが少々早すぎた。黒田節に感化されて口調だけを真似したがるような二流の役者(岸田首相のことだ)には、もう少し丁寧な、「噛んで含めるような台本」が必要だった。
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