岸田首相に教えてあげたい「真の少子化対策」 2倍に増やすべきは「子供予算」などではない

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フランスの歴史人類学者エマニュエル・トッド氏は、出生率を含む人口動向を見て「日本は国力の維持を諦めた国」に見えるという。その通りかも知れない。だが、社会機能の維持と経済の活性化を考えるなら「なるべくなら少子化が進まないほうがいい」とも、多くの国民は思っている。筆者も同意見だ。

しかし、「直接的な少子化対策」は、多分やっても大した意味はないと考えている。

非婚化率は上昇、結婚のインセンティブも存在せず

まず、そのことを確認しよう。少子化の根はあまりに深いし、それはすでにわれわれが幸福について考えるうえでは進行しすぎてしまった。

少子化に影響を与える大きな要因の1つが非婚化だ。麻生太郎自民党副総裁が指摘した女性の晩婚化よりもこの問題のほうが大きいはずだ。生涯未婚率(50歳時点までに未婚の割合)で見ると、1980年に男性2.60%、女性4.45%だったものが、2020年には男性28.25%、女性17.81%と大きく増えた。

この原因について、最近話題になった日刊現代の記事で、中央大学の山田昌弘教授は、「収入が低い男性はパートナーとして選ばれにくいからだ」と指摘している。その通りだと筆者も思うが、結婚適齢期の男性の収入を「パートナーとして魅力的だ」と思えるところまであまねく引き上げるのは無理だ。

 共働きで夫婦合わせて十分な収入があればいいと思うかもしれないが、十分に稼いでいる2人が「是非結婚したい」と思うようなインセンティブが存在しない。

結婚が必要だと思うのは、現在の日本の世間を考えると子供を持つときだが、子供には大きな教育費がかかるし、育児に時間や手間をかけることは仕事の側での機会費用の発生と自由時間の減少を意味する。付け加えると、配偶者の親の介護の責任を一部負担する可能性なども無視できない「コスト」だろう。

「金に物を言わせる」解決策の1つは、子供を産み・育てると、働く以上の報酬が得られるような金銭を給付する「スーパー子ども手当」のようなものの支給だが、将来の子による親の援助の可能性や親の介護など、子供を持つことのメリット面の多くが親に帰属するいっぽうで、子供を持たない人が支払った税金が多額に投入されることの納得を広く得ることは容易ではない。

かつて民主党政権の子ども手当がつぶされ、今また児童手当の所得制限の有無を議論しているようなケチな感覚では、少子化の対策として有効性を発揮するような現金支給政策は実現が難しかろう。

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