いずれの形であっても、「不動産で不労所得」などという怪しい呪文を信じて、自分の全信用を差し出して、身の丈を超えた借金を背負うようなレバレッジよりもはるかに安全である。
さて、「株式性の報酬」は、どこがいいのだろうか。
まず、アップサイドが実現した場合のスケールの大きさだ。株式、すなわち資本は、マルクス風に言うと多くの労働者から価値を搾取することが可能な仕組みだ。事業がうまく行った場合には、雇う労働者を増やしてどんどん拡大することが可能だ。
加えて、会社の資本が株式として上場されて市場で評価されるようになると、「現在の株価」は「将来の利益成長」を織り込んだ価格として評価される。何年分もの成長を先取りして「今」評価してくれるのだ。うまく行くと、投資家の「夢」の価格まで株価に織り込まれるので、何ともありがたい。
事後的に成功したベンチャー企業の初期の社員の場合(例えば社員番号が2桁の社員)、会社から与えられた自己株と自己株の持ち株会に参加していただけで、入社の十数年後には数億円の資産を持っていたといった成功話を聞くこともある。これなら、資産ができた時点でまだ若いし、堂々のFIREだ。
「固定報酬型」よりも「成功報酬型」が圧倒的に有利
ある程度成熟した外資系企業のような会社に勤めた場合、自己株式、あるいはストックオプションが「成功報酬」的に与えられることが多い。実は、世の中一般に、「頑張るので○○支払ってください」という場合の固定報酬よりも、「稼いだ場合は稼ぎの☆%をください。稼げなかったときはゼロで結構です」という条件の成功報酬のほうが、同じ仕事への報酬として圧倒的に有利な条件になることが多い。
これは、普通のアクティブファンド(固定のフィー)のファンドマネジャーよりも、ヘッジファンド(主に成功報酬のフィーである)のファンドマネジャーのほうが、圧倒的に大金持ちが多いことの理由に通じている。
世の中は「成果主義」が浸透していく傾向にあるが、成果主義は「成功報酬型フィー・システム」であり、成功報酬型のフィーは金融論的には「コール・オプション」なので、ビジネスのリスクを大きくするほどその価値が大きい。働き方自体のコツとして、(1)成功報酬の仕組みを手に入れて、(2)なるべく大胆にリスクを取る、ことが有利でもある。
もし失敗したらやり直せばいいし、成功したら胸を張って大きな報酬を取るといい。失敗しても次回のチャンスがある場合が多いし、最悪「クビ」になっても借金が残るわけではない。
かつては転職が難しかったし、失敗は人事評価上の汚点としてのちのちまで影響したので、「リスクを取らずに確実にポイントを稼ぐ」ことがサラリーマンの行動原理だったが、今後は発想を180度転換するほうがいい。
外資系の会社のストックオプション付与は成果のご褒美的な形で行われるが、「成功報酬を株式でもらう」のだから具合がいい。
また、株式性の報酬は支払う側が気楽なので、条件が甘くなりやすいことも見逃せない。例えば、成長期の企業は事業拡張に投資したいので、人件費の形でキャッシュが流出することを好まない。そこで、賃金の一部を株式性の権利で支払うと、キャッシュの流出を抑制できる。ただちにはキャッシュの負担をもたらさない報酬支払いなので、条件が甘くなることが多い。
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