あまちゃん10周年「赤字の三陸鉄道」に吹く追い風 再放送スタート「ブーム再来」の起爆剤となるか

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国やJRの厳しい予測に反して、開業から10年間は黒字経営を続けたが、1994年に赤字に転落。補助金で経営を維持しながら、観光客を呼び込むために旅行会社への営業などを進めてきたが、震災前は黒字に転換することはかなわなかった。

開業した1984年の利用者数は268万人。それが震災前の2010年には7割減の85万1000人まで減少。さらに津波で大打撃を受けた2011年は29万6000人に落ち込んだ。北リアス線、南リアス線が全線復旧した2014年には、全線開通と「あまちゃん」効果で69万人に回復したが、それでも震災前年の数字にも届いていない。

経営が苦しいのは三鉄だけではない。全国に40ある第三セクター鉄道のうち、2022年に経常損益が黒字だったのは1社のみ。国鉄やJRから切り離され、地元に経営を委ねられた三セク鉄道はどこも共通の課題を抱えている。

地域住民にとっての「三陸鉄道」

大きな要因となっているのは、高校生の定期券販売など地域住民の利用の低迷だ。三鉄沿線住民の人口は開業時の24万7000人から18万6000人(2014年)へと約25%減少した。この数字以上に若年者の人口減少は深刻だ。

保護者の経済的な負担を減らすため、寄附を財源とした「いわての学び希望基金」を活用し、通学定期券購入費を支援しているが、今の高校生の親世代はすでに子どものころから自家用車が普及しており、保護者の送迎で登下校する高校生も少なくないという。

一方で、町村部に暮らす高齢者の通院や買い物の足として三陸鉄道はなくてはならない存在であることは変わらない。石川社長は「住民は震災後、三鉄が動き始めたときの感動を憶えていてくれる。だからこそさまざまな方法で人を呼び込み、地域に貢献していきたい」と語る。

開業時から沿線を見続けてきた金野さんにとって、震災後、列車が走っていない区間でも、地域の人たちが駅舎の掃除を続け、開通の日を待ち続けてくれたことが今も支えになっている。

「あまちゃん」では、アキらのユニット「潮風のメモリーズ」の再結成や「海女カフェ」の再建、3組の夫婦の再婚、北鉄の復旧計画など、いくつもの復活が描かれた。震災から復活を遂げた三陸鉄道が赤字経営を脱却し再び復活を果たすことができれば、地域住民はもちろんのこと日本中を明るくするニュースになることは間違いない。

手塚 さや香 岩手在住ライター

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てづか さやか / Sayaka Tezuka

さいたま市出身。毎日新聞の記者として盛岡支局や学芸部で取材経験を積んだ後、東日本大震災からの復興の現場で働くため、岩手県釜石市に移住。復興支援員として活動し、2021年にフリーランスとして独立。一次産業や地方移住をの分野を中心に取材・執筆しているほか、キャリアコンサルティングや地域おこし協力隊の支援活動も行っている。

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