あまちゃん10周年「赤字の三陸鉄道」に吹く追い風 再放送スタート「ブーム再来」の起爆剤となるか

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運賃収入以外の収益確保策にも力を入れる。年間30万円で車両先頭の円形看板に企業の社名やロゴを掲出するヘッドマーク広告は好評で順番待ち。ラッピング車両とともに広告料収入の確保につながっている。

地元の水産加工業者などと共同開発した特産品やオリジナルグッズを販売する「さんてつや」とそのオンラインショップの経営、沿線の飲食店と連携した「駅-1グルメ旅」など、取り組みは鉄道事業にとどまらない。

広告予算が乏しい三陸鉄道が活用しているのが、テレビや新聞、雑誌、ウェブメディアなどの記事掲載だ。そのために頻繁にプレスリリースを発行し、県内メディア向けに記者会見を開く。2022年冬にTBSの情報番組で「こたつ列車」が紹介された際には約80件の予約が入り、テレビの根強い効果を感じているという。

話題性を意識した企画も多く、「ナイトジャングルトレイン」はその代表例。ニホンジカと衝突して遅延することが多いのを逆手に取り、夜間に臨時列車を運行。多くのメディアで紹介され、岩手県内外の親子連れなどが参加したという。

アクセスの悪さからインバウンドの時流に乗り遅れ気味だった岩手県だが、今年はひさびさに明るい要素もあり、県は誘客促進に向けた補正予算を計上した。

1つは3年間休止していた花巻空港と台湾を結ぶ定期便の再開、もう1つは盛岡市がニューヨーク・タイムズの「2023年に行くべき52カ所」に選ばれた効果で岩手の人気が高まっていること(参照:『米紙の行くべき街に「盛岡」日本人が知らない魅力』)。さらに三陸の宮古市には今年、過去最多の7隻の大型クルーズ船の寄港が予定されていることも一因だ。

大型クルーズ船は大きいものでは、沿線にある村の人口の倍以上の5600人が乗船できる規模。大半が10時間以上停泊し、乗客は観光のため下船することから、旅行会社と組んで三鉄乗車体験を働きかけている。

日本最初で最長となった三セク鉄道

2019年のJR山田線移管を受けて、総延長163kmという日本で最長の第三セクター鉄道となった三鉄。実は日本初の第三セクター鉄道としても知られる。「あまちゃん」初回冒頭で描かれた1984年の北鉄開通式は三鉄の歴史そのもの。

国鉄の合理化が進んでいた時代、国鉄は建設途中だった三陸沿岸の路線の廃止を決定。それを受けて岩手県や沿線市町村が立ち上げた三セクの鉄道会社が三陸鉄道だ。

沿線の人口規模や自家用車の普及などにより当初から経営が不安視されたが、「陸の孤島」とも呼ばれ道路事情が悪かった三陸の住民たちは三鉄開通を待ちわびていた。

運行本部長の金野さんは、1984年の開業のために新卒で入社した1期生。「開業の日、駅のホームや沿線は人であふれかえり、この地域にこんなにたくさんの人がいたのかとびっくりするほどだった」と振り返る。

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