あまちゃん10周年「赤字の三陸鉄道」に吹く追い風 再放送スタート「ブーム再来」の起爆剤となるか

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海岸線を走る「あまちゃん」放送10周年記念車両(写真:三陸鉄道提供)

この車両は、「あまちゃん」のファンたちがクラウドファンディングで約790万円を調達し実現させたもの。

復興支援ボランティアで東北に足を運んでいた男性が発起人となり、「ドラマにちなんだ車両で被災地を元気にしたい」との思いから、車両の全面に海女姿ののんを描いた「あま絵」などカラフルなイラストをレイアウトした。再放送が決まる1年以上前から、10周年に向けて有志が実行員会を結成し、NHKなどと交渉を重ねたという。

実行委員会から打診を受けた三陸鉄道は、車内にも「あま絵」を展示することで乗車を促そうと、同社の出資者である岩手県や沿線市町村から財源を確保。ラッピング車両としては異例の定時運行も実現し、週末や大型連休の発着時間をホームページで公開中だ。

4月8日の出発式には岩手県知事らとともに主人公アキを演じたのんも出席。海女姿で一番列車を見送る様子がネットメディアやスポーツ新聞で取り上げられた。のん自身も列車に乗車した様子や現地滞在をYoutubeチャンネルで投稿しており、その効果にも期待を寄せる。

震災学習列車、こたつ列車、物販も

とはいえ、「あまちゃん」頼みでは厳しい経営状況を乗り切れない。2021年度の三鉄の決算は経常損益で6億9000万円の赤字。そこに国、県の補助金などを計上し最終的に純利益は450万円の赤字となっている。

2019年には北リアス線と南リアス線の間の区間を走っていたJR山田線が譲渡され、2019年度と2020年度の純利益は黒字を確保したが、コロナ禍の影響や物価高騰などのコスト増により、2021年度に続き2022年度も赤字となる見通しだ。

三鉄では利用客を呼び込み収益増につなげるため、冬場の閑散期の「こたつ列車」「初日の出号」「冬休み自由研究列車」といった企画のほか、春秋の「プレミアムランチ列車」やJR東日本と連携した企画列車の運行にも取り組んできた。

企画列車と並んで三鉄の代名詞ともなっているのが、2012年6月に始まった「震災学習列車」だ。震災を経験した社員が経験談を語るこの企画は、首都圏などの企業の研修プログラムとして定着。コロナ禍でも修学旅行の利用を伸ばしている。

石川社長は「震災学習列車の運行は全国からの支援を受けて復活した三鉄の使命。災害を自分ごととして考える機会を提供するとともに、自然豊かな三陸の魅力を感じてほしい」と語る。

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