あまちゃん10周年「赤字の三陸鉄道」に吹く追い風 再放送スタート「ブーム再来」の起爆剤となるか

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実際の三陸鉄道は津波によって北リアス線(宮古駅~久慈駅間)と南リアス線(盛駅~釜石駅間)の2路線のうちの317カ所で橋梁や堤防ごと線路が流出するなどの被害を受けた。7つの駅に津波が到達し、線路が通っていた土地はがれきに埋め尽くされてしまった。 

津波から5日後の3月16日以降、被害が小さかった区間で走り始めた運賃無料の「災害復興支援列車」は被災した住民に希望を与え、三陸鉄道は復興に向けて前進する三陸のシンボルとしてテレビや新聞で取り上げられた。この小さなローカル線の奮闘がドラマ「あまちゃん」誕生のきっかけになったことは間違いないだろう。

ドラマファンが実現 放送10周年列車

放送から10年の今年。3月13日にNHKが再放送決定を発表すると、思いがけない知らせに三鉄社内は色めき立った。事前の連絡はなく、NHKのニュースで再放送を知った石川義晃社長は「『あまちゃん』再放送を期待する声が多いとは聞いていたが、本当に実現するとは」と喜びを隠せない様子。放送当時、毎回観ていたが、今回もチェックを欠かさない。

社長就任前の岩手県職員時代から「あまちゃん」のファンだったという石川義晃社長(筆者撮影)

撮影に尽力し、運転士役でたびたび登場している同社運行本部長の金野淳一さんは、ドラマ放送中から多くの観光客でにぎわった久慈駅周辺の様子を鮮明に憶えている。「人の流れが回復し始めたこの時期の再放送はありがたい。来年の開業40周年に向けて弾みがつけば」と期待する。

ドラマ撮影時には運転士役の俳優に演技指導もした運行本部長の金野淳一さん(筆者撮影)

「2023年は観光客のV字回復を目指す年。再放送をきっかけに観光客を呼び込みたい」。そう意気込む石川社長が「ブーム再来の火付け役に」と目論んでいるのが、「あまちゃん」放送10周年を記念して4月15日から1年間運行するラッピング列車「三陸元気!GoGo号」だ。

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