なぜ人気化?「国産の小麦」が大躍進を遂げたワケ 岩手発の「もち小麦」はこう育てられてきた
「もち姫食パン」は看板商品に
その後、白石さんは、ベーカリーPanoPanoを盛岡市内に開業。休日には行列ができるほどの人気店となっている。
お店での「もち姫食パン」の販売は2015年7月から。1斤450円にもかかわらず、その食感と味にリピーターが増え続け、いまでは「もち姫」を用いた商品の売り上げは、PanoPanoの30%を占める看板商品にまで成長した。PanoPano自体の売り上げも2015年と比較して120%と、「もち姫」の貢献は大きい。
「食パン1斤が67円で売られていた時代に、高級食パンブームが起きました。やりようによっては、弊社が高い値付けをした商品も受け入れていただけるはず。また、やはり盛岡生まれの品種で看板商品を作りたいとの思いが強くありました」(白石さん)
そうはいっても、パン作りに適しているわけではない「もち姫」の使用をトップダウンで進めてしまって、問題は起きなかったのだろうか。
「『もち姫』を混ぜると発酵がうまくいかなくなります。焼いた時の膨らみが悪くなるんですから、社員は内心ではやりたくなかったでしょうね。私は私で、契約栽培で購入した『もち姫』を使い切らなければいけませんでしたし、後には引けませんでした。
パンにもちっとした食感を持たせる時にはタピオカデンプンを使うのですが、同じもちっと感でも、『もち姫』を使うとするっとした感じで口どけがよくなり、さらにどこか出汁に通じる味わいも出せたのです。
ただし『もち姫』だけでは商品にできるレベルのパンは作れません。『もち姫』以外に『銀河のちから』『ゆきちから』もあわせて3品種をブレンドすることで、ようやく地元産100%の『もち姫パン』を実現することができました」(白石さん)
「もち姫」のお陰で開発スタッフの技術レベルが上がったと語る白石さん。それにしてもどうしてここまで「もち姫」に肩入れできたのだろうか。
「以前、ドイツをはじめヨーロッパを回って気づいたのは、その土地で生産された小麦とその土地ならではの食文化が強く結びついていることです。『もち姫』を使えば、盛岡ならではの新たな食文化が生まれそう。だからこそ麺屋さんとも連携し、仲間を増やしていきたい。お互いに技量を高めていけば、必ず何かを起こせそうな予感もしています」
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