なぜ人気化?「国産の小麦」が大躍進を遂げたワケ 岩手発の「もち小麦」はこう育てられてきた
こうした中、国産小麦に積極的に取り組んできた会社のひとつが、昭和16年に岩手県で創業した岩手の製粉会社、府金製粉の府金慶社長だ。
府金慶社長はこう語る。
「過去、国産小麦は海外産よりも品質が劣っていた時代があり、長く、増量剤的な用途でしか使えませんでした。事実、今も国産小麦のほうが買い取り価格は安いのです。現在も、農家に対して補助金を出さなければ生産を維持できない状況です。ただし品種改良が進んだおかげで、『キタノカオリ』や『ゆめちから』などの品種は外国産よりも高く買ってもらえるようになってきました。
強力粉用の輸入品種よりもタンパク質含有量が多い超強力品種『ゆめちから』が開発された際に、Pascoの敷島製パンがいち早く『ゆめちから』を長く大量に使い続ける決断を下し、よい前例を作ってくれたおかげです」
国が開発した世界初のもち小麦
日本における小麦の一大産地は、生産量62%を占める北海道だ。次いで8%の福岡県、6%の佐賀県と続く。東北6県の中では、岩手県が約6割を占めている。これはもともと冷害を起こしやすく、米の生産に向かない土地柄であったことによる。
1995年、この岩手県で画期的な小麦が開発された。世界初のもち性小麦「はつもち」という品種。
デンプンがうるち性からもち性に変化することを、「もち性」という。米にはうるち米ともち米とがあり、古くから餅やおこわにもち米が利用されてきたが、小麦の場合はもち性の品種などは存在しなかった。もち小麦は、小麦製品に新たな魅力をつけ加える可能性のある大発明なのだ。
なお「もち麦」という言葉を耳にした人もいるかもしれないが、この「もち麦」は用途が限られる大麦であって小麦ではない。
その画期的な「はつもち」だが、収量が低いうえに小麦粉の色が悪かったせいで残念ながら、普及せずに終わった。しかし、もち小麦をブレンドすると「食感が改善される」「もちもち感がでる」「日持ちが良くなる」等の特徴が確認された。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら